八木勇征の静かな決心「もう僕には、普通は要りません」
キラキラ映画とはベクトルが違う、矢野くんの魅力
八木はもともと『矢野くんの普通の日々』原作漫画を知っていた。SNSで、赤一色の背景に怪我をした矢野くんが載っている表紙を見て「日常漫画っぽいけど、パンチが効いているな」と感じたという。 「表紙のビジュアルが気になって読み始めたんです。悪い人がひとりも出てこない平和な物語で、かつ矢野くんが怪我をしてしまう場面は生々しさや色気もあって、これまで読んだことのない、たくさんの感情をもたらしてくれる漫画でした。矢野くんがこれほどまでに欲しがっている“普通の日常”って、僕たちが当たり前のように過ごしている日々のことなんです。なんでもない些細なことが、彼にとっては尊い。矢野くんから、日常にある幸せって当たり前のことじゃないんだって、教えてもらいました」 本作のキービジュアルやパンフレットは、一見するとポップで可愛らしいイメージだ。しかし、本編映像を観るとまた印象が変わる。 「僕が原作を読んで、矢野くんが怪我をしている様子に妖艶さや色気を感じたのと同じように、矢野くんに惹かれていく吉田さんも、彼と目が合った瞬間にドキッとしているんです。『矢野くんの普通の日々』にしかない魅力がある、と率直に感じたし、実写版は原作ファンの方にも新しい側面を受け取ってもらえる作品になったと感じています」 クスッと笑える部分あり、心の底から幸せになれるハッピーなシーンもあり。かつ普通とは何か、日々当たり前だと感じている小さな幸せについて、あらためて目を向けるきっかけにもなってくれる。キラキラ映画とは一線を画す『矢野くんの普通の日々』に、八木は人一倍の思い入れがあるようだ。 「人を傷つけないために自分から距離をとったり、心から欲しいと思っている些細な日常や小さな幸せからも遠ざかろうしたりする、矢野くんに思わず感情移入しちゃうと思います。僕も、矢野くんが幸せそうな顔をしていると嬉しいです。どの登場人物に共感するか、考えを巡らせながら観てもらうと、より楽しめるんじゃないでしょうか」