これぞ「てじな~にゃ!」…猫写真家が捉えた衝撃の瞬間「猫車をつき抜けるネコ」
「今まで見たことない」「見ていて笑っちゃう」――あの糸井重里さんや黒柳徹子さん、藤あや子さんらも絶賛のベストセラー猫写真集『必死すぎるネコ』シリーズをはじめ、コミカルで愛おしい猫たちの決定的瞬間を収めた猫写真集を多く世に出し、話題を集めている猫写真家・沖昌之さん。 【写真】まるで「猫神様」!? 猫写真家が一枚の写真に収めた「神々しいネコの姿」 「カメラを持った人間がウロウロしているなんて、猫にとっては不自然極まりないこと」。怖がらせたり不安な気持ちにさせないようにと“猫中心”の配慮を欠かさない沖さんだからこそ、その撮影された写真には、厳しい環境下で暮らしていることから警戒心の強い外猫たちのイメージが大きく覆されるような、躍動感やユーモア溢れる生き生きとした猫たちの姿が映っています。 そんな沖さん、2024年10月10日~11月16日までの間、キヤノンオープンギャラリー1(品川)で【沖昌之写真展「ネコなんです。」】を開催中! FRaU webでは、写真展で泣く泣く公開しないこととなったカットの中から、経緯深い猫たちの写真とそのエピソードをインタビューのうえ、お届けします。 第5回目は、まるで手品!? 思わず「てじな~にゃ」のセリフでお馴染みのイリュージョニスト・山上兄弟を思い出してしまうような、偶然が生み出した奇跡的瞬間のお話をご紹介します。
まるで手品!? 猫車をつき抜けるネコ
「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」 「猫の手品がはじまるニャ~」 これは熊本県の湯島という猫島で撮影した1枚です。 この島では、猫車の上に猫が乗っていたりとすごく楽しそうな光景を目にすることが多かったのですが、僕はそんな様子を見ながら「猫車の上で猫がじゃれあって格闘してるとか、なにかもう1つプラスアルファで面白い瞬間が撮れたらいいなあ」なんて少し意識していたんです。その場を通りがかるたびに「今何してるんだろう、あ、乗ってるだけか」とか「全然おらへんな~」という感じで気にかけていて。 そんな矢先、湯島に滞在して何日目か経ったある時たまたまこの場所を通りがかったら、偶然この写真の瞬間に出くわしてしまい、わ~!?ってなりまして(笑)。 イリュージョンみたいに「突き抜けてるやん!」って思えるくらい、本当に猫たちがベストな立ち位置だったんです。 おそらく猫車の下の猫は、上の猫にちょっかいをかけようとしてたのかな? 上の猫も気取ってなくてなんだかとぼけている様子で、上半身が綺麗に見切れるようにきっちり立ち上がってくれてたので、もう見た瞬間に「あ、これ撮らな」って思って。 とはいえ「ここからさらに近づいて撮れたらいいけど、近づく前にこれ終わるんじゃないか……?」っていう状況でもあったので、僕も座りこむとか撮影の体勢を整えるようなこともできず、とにかく持っていたカメラをすぐ構えて、だいたい10mぐらいの距離から一生懸命ズームして撮影してみました。だけど、なかなかうまく撮れなくて。結局、望遠レンズに変える間も惜しくて、カメラを構えて歩きながらシャッターを切って撮影しました。 撮影の際、1匹が逃げると周りの猫にも緊張が走ってしまいますし、レンズ交換をしてる音が気になっていい瞬間を逃してしまうこともあります。でも逆に、バッグの音や下ろした所作とかで「ご飯もらえるかも」「この人、なんかあるんじゃない?」みたいな感じで猫が動いてくることもあるんです。 私の動作によって、猫たちが自発的にやっていた行動を止めて、こっちにやって来てしまう時もあるので、結構ポジションを取る時には気を使います。「しゃがんでいいタイミングかな?」と思ってやってみたら「あ~寄ってきたなあ」「しゃがんだの失敗したな~」ってなる時もあります(笑)。いい瞬間を捉えるのはなかなか難しい。 だからこそ、この場面に遭遇した時は「奇跡や!」って思いながら夢中でシャッターを切っていました。
沖 昌之(猫写真家)