「魔王」「キングダム」…代表作多数“187cm”長身イケメン俳優チュ・ジフンとは?新作「照明店の客人たち」では抑えた演技ながら存在感
大ヒットドラマ「ムービング」(2023年)の原作者カンフルが原作&脚本を手掛けたヒューマンミステリー「照明店の客人たち」。同作で風変わりな“客人”たちが夜な夜な訪れる照明店の店主ウォニョンを演じているのが、韓国の人気俳優チュ・ジフンだ。そこで今回は、日本でもリメークされた「魔王」(2007年)や国際エミー賞にノミネートされた大作「キングダム」(2019年)など多くの作品をヒットさせてきた実力派、チュ・ジフンのキャリアを振り返る。 【全身ショット】チュ・ジフン、さすがのスタイルで魅了!「照明店の客人たち」キャスト勢揃い ■「照明店の客人たち」では謎めいた“店主”役 無数の照明が天井から吊り下げられ、煌々と輝く照明店。その中で静かに佇む男性がウォニョンだ。サングラスをかけていて目元は見えず、口調も落ち着いていて服装にも派手なところはないにもかかわらず、どこか只者ではない存在感が漂う。まるで現実とファンタジーの境目を守る“番人”のように、どちらにも染まらない独特な空気をまとい、訪れる客たちをそれとなく観察している。 さまざまに揺れ動き、交錯する人々の“生と死”を照明店のカウンターから静かに眺めるウォニョン。本作のキーとなるキャラクターだが、同作の配信開始に先立って行われた会見でも気負う様子はなく、さばさばとした口調で「素晴らしい脚本と、それを誠実に準備してくださる監督とスタッフに出会ったら、役者としてやることはそんなにないです。監督と話しながら、脚本に書いてあるそのままを忠実に具現化しようと思っていました」と答える姿が印象的だ。 ■監督に絞られ演技のいろはをつかみ取った若手時代 そんなジフンの出発点は、187cmのスタイルを生かしたモデル業。その後、2005年に俳優デビュー後すぐにヒット作に恵まれた。“もし現代韓国に王朝が続いていたら”を描いたラブコメディー「宮(クン)~Love in Palace」(2006年)だ。世界23カ国で放送されたこの作品で、ジフンは原作漫画から飛び出したようなイケメン皇太子イ・シンを好演。勝ち気なヒロインのシン・チェギョン(ユン・ウネ)に口論では負けるものの思いを抑えきれず、「もう少し、このままで…」とそっと後ろから抱き締める場面など、口下手なシンの絶妙なツンデレ具合に沼落ちするファンが続出した。 ■5kg減量で挑んだ冷たい殺人者役 翌2007年には、ミステリードラマ「魔王」に主演。有能で親切な人権派弁護士と、氷のように冷たい殺人者、という正反対の顔を併せ持つ屈折したキャラクターを、5kg減量してよりシャープになったビジュアルで熱演した。この作品の熱狂的なファンは“魔王族”と呼ばれ、日本でも大野智主演で2008年にドラマ化された。 持って生まれたビジュアルと才能で苦労なくスターへの階段を昇ったようにも見えるが、素顔はまじめな努力家。「宮(クン)~Love in Palace」でも「魔王」でも、撮影前の台本読みの段階で監督に食らいつき、徹底的に絞られダメ出しを受けながら演技のいろはをつかみ取っていった、というエピソードをのちにトークバラエティーで打ち明けている。 ■“サイコパス殺人犯”役で得た実力派という評価 地道な努力で基礎を身に付けた若手時代を経て、近年は多彩な役柄で唯一無二の個性を見せている。死者が巡る7つの地獄裁判を描き韓国で記録的ヒットとなったダークファンタジーアクション大作「神と共に 第一章:罪と罰/第二章:因と縁」(2017年)では、高麗時代の最高の武将で今は冥界からの使者を務めるへウォンメクを演じ、CGと融合したダイナミックなアクションも披露。親しみやすいキャラクターも人気を呼び、新たなファン層を獲得した。 映画「暗数殺人」(2018年)で演じたのは“サイコパス殺人犯”。実在の事件を基にしたこの作品で、ジフンは常軌を逸した殺人犯を怪演した。当初、「全部で7人殺した」と自白したかと思えば、取り調べの最中に突如笑いだし、自白を翻して刑事を惑わすなど、ミステリアスでつかみどころのないキャラクターが与えた印象は強烈。ジフンは本作で「第39回青龍映画賞」人気スター賞を獲得したのをはじめ、さまざまな賞を獲得し、演技派俳優としての座を不動のものとした。 ■米ニューヨークタイムズ誌にも選ばれた代表作「キングダム」 そんなジフンの代表作の一つといえば、15~16世紀の宮廷時代劇とゾンビスリラーというありそうでなかった組み合わせが注目を集めた、2019年の主演ドラマ「キングダム」。壮大な世界観のこの作品で、ジフンは未曾有の事態に翻弄(ほんろう)されながらも民衆を守ろうと立ち上がる正義の世子(皇太子)イ・チャンを熱演。本格的な剣術アクションも披露した同作は、国際エミー賞にノミネートされ、ニューヨークタイムズ誌が選ぶ「The 10 Best TV Shows of 2019(ベストテレビ番組トップ10)」にも選ばれるなど世界で高く評価され、シーズン2も制作された。 2024年5月には42歳となったジフン。近年はドラマ「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」(2020年)や「智異山~君へのシグナル~」(2021年)でミステリアスな"大人の色気”を体現。「神と共に」のハ・ジョンウと再共演した映画「ランサム 非公式作戦」(2023年)では、打算的だが憎めないタクシー運転手という新機軸を披露。ドラマシリーズ「支配種」(2024年)のボディーガード役で見せたハードな接近アクション&ハン・ヒョジュとのそこはかとないロマンスも注目を集め、韓国ではスリラーから恋愛ドラマまで多彩なキャラクターを演じる実力派として確固たる地位を築いている。 ■「愛は一本橋で(原題)」では18年ぶりのラブコメに挑戦 そんなジフンが取材の場でよく口にするのが、“プリプロダクション”と言われる撮影前の準備期間の重要性。台本の打ち合わせから始まって、美術や小道具といった入念なスタッフワーク、俳優同士のコミュニケーションに至るまで撮影前の準備を重視するその姿勢は、経験値のまだ浅い時期からメインキャストを任され、監督に絞られダメ出しされながら本番を見据えて自らを成長させてきたからこそのものだろう。 「照明店の客人たち」の店主ウォニョン役では抑えた演技で只者ではない気配を漂わせる一方、韓国で11月から放送されている「愛は一本橋で」は、「宮(クン)~Love in Palace」以来18年ぶりのラブコメ作品だ。コミカルなロマンスからサイコパス、スリラーといったハードな作品に至るまで絶妙なバランス感覚で演じ切る実力派チュ・ジフンならではの振り幅を存分に楽しみたい。 「照明店の客人たち」(全8話)はディズニープラスのスターで毎週水曜に2話ずつ配信中。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部