3位転落の広島・マエケンが涙の決意
ゲームセットの声がかかってもマエケンは、その場を動かなかった。ベンチのフェンスに両腕をのっけて、もたれかかったまま。その目は真っ赤になって、やがて涙があふれた。それは、エースの責任を果たせなかった前田健太の痛恨の涙だった。 スコアボードは1-4。満員のファンで埋まったスタンドは異様な静けさに包まれている。 「悔しい点の取られ方をしてしまった……ボークなんて入団2年目にあったくらいだったけど……」 試合後、記者に囲まれたマエケンは、落ち着きを取り戻していたが、“悔しい”という言葉を何度か使った。 涙を流すほど、悔やんだ場面のひとつは、1点のリードで迎えた6回二死三塁のシーン。走者を気にせずワインドアップで投げようとしたマエケンは、一度プレートを外して仕切り直したが、その所作をボークと判断された。 「うそーー」 マエケンは、その判定に不満そうに口を動かしたが、三塁ランナーの坂本は労せず1-1となる同点ホームを踏んだ。初回から走者を背負いながらも粘り強く熱投を続けていたマエケンは、自らのボーンヘッドで同点を許したのである。 そして8回には二死から同級生の坂本に、この日3本目のヒットをレフト前に打たれると、続く阿部にストライクが入らなかった。このゲーム初めての四球で一、二塁となると5番のアンダーソンに低めのボールになる変化球をジャストミートされた。打球は右中間を真っ二つ。均衡が破れた。マエケンはマウンド上で悔しさを隠さなかった。 四球を与えた直後の初球だった。しかもバッターは外国人のアンダーソン。セオリーならば、もうボールひとつ分外した変化球から入るべきだったろう。微妙に手元を狂わせたのは、この試合が持っていた大きなプレッシャーだったのかもしれない。 広島は6日、巨人をマツダスタジアムに迎えて今季季最終戦を戦ったが、勝つか引き分けならば2位、負ければ3位転落という球団初のCS本拠地開催を賭けた大一番だった。