Yostar最新作『ステラソラ』が持つプリミティブな体験 モバイルゲームは“両立”が重視される時代に
Yostarは12月18日、最新作『ステラソラ』を発表した。 「数々の人気作を世に送り出してきたYostarによる新作」ということもあり、発表直後から話題を呼んでいる同タイトル。はたして『ステラソラ』はどのようなゲームとなるのだろうか。発表とあわせて公開されたトレーラーから、その全体像を紐解いていく。 【画像】旅と日常が交差するファンタジーRPG! Yostar最新作『ステラソラ』のスクリーンショット ■Yostarが贈る「旅と日常が交差するファンタジーRPG」。 『ステラソラ』は、『アズールレーン』や『雀魂』『アークナイツ』『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』などの人気作を日本向けに配信/運営する中国のパブリッシャー・Yostarが手掛ける、モバイル向けのファンタジーRPGだ。舞台となっているのは、四方を海に囲まれた十字型の大陸・ノヴァ。各地にそびえたつ巨大な塔「星ノ塔」には、大陸の発展に欠かせない不思議な品「神器」が眠っており、「巡遊者」たちは、その入手を生業としてきた。主人公である「魔王」は、失った記憶の手がかりを探すため、彼らとともにギルド「空白旅団」を結成し、星ノ塔へと挑んでいく。プレイヤーは第三者の視点から、描かれる旅と日常の物語を見つめていく。 今回の発表にあわせ、Yostarは公式サイト、公式X、公式YouTubeチャンネルを開設するとともに、ティザーPV、アニメPV、ゲームプレイトレーラー、キービジュアルなどを公開した。それらに盛り込まれた情報を踏まえるかぎり、『ステラソラ』は、アニメタッチで描かれた個性あふれるキャラクターたち、ライトアクションに分類されるゲーム性、ノベルゲーム調のストーリーパートといった要素を特徴とするタイトルとなりそうだ。 配信時期は現時点で未定。基本プレイ無料・アイテム課金型で、モバイル(Android/iOS)、PC(Windows)に対応する。公式サイトでは、アナウンスとともにLINEやメール、Xを通じての事前登録も開始となっている。 ■シンプルさ、爽快感、中毒性…。『ステラソラ』に内包されるトレンドと対極のゲーム性 先にも述べたとおり、Yostarは人気作のローカライズやパブリッシングを手掛ける企業として広く知られている。現在のところ、『ステラソラ』の開発/発売元の情報は明らかとなっていないが、少なくとも発売に関しては、同社が担っているとみるのが自然だろう。他方、Yostarはこれまで自社でゲームタイトルを開発した経験がない。このような背景を知っているフリークにとって目下の関心事は、「どの企業、あるいはスタジオが『ステラソラ』の開発を手掛けているのか」なのではないだろうか。 実はYostarは2024年8月、自社サイトのお知らせページにおいて、新規モバイルゲーム開発チームの発足と、ゲームデザインのコアメンバーとしてチームに参加するディレクター候補の募集を告知している。こうした動向を踏まえると、『ステラソラ』は、はじめてYostarが開発から発売までを一貫して担うタイトルとなるのかもしれない。その一方で、告知時期からは4か月ほどしか経過していないため、もしかすると、その“モバイルゲーム”はまだ見ぬタイトルである可能性もある。 はたして『ステラソラ』はどのようなゲームとなるのだろうか。ビジュアル面を観るかぎり、そのターゲットは、Yostarの手掛ける『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』のそれと近しいものであるようにも思える。同作は「美少女キャラを好むゲーマーに向けた新規IP」として「日本でヒットすること」を目的に制作された背景を持つ(※1)。少なくとも現時点で公開されている『ステラソラ』の(主人公を除く)8名のキャラクターたちは、すべてがいわゆる“美少女”であり、この点には、両者の共通項を見出すことができる。 他方、システム面では、雑魚戦での「ヴァンサバライク(※2)」なゲーム性が目を引く一方で、ボス戦においては、『ファイナルファンタジーXIV』のようにギミックが盛り込まれている様子も確認できた。おそらく『ステラソラ』は、次々と押し寄せてくる敵を蹴散らすことで使用キャラクターがレベルアップし、そのたびに、新たなスキルの習得、スキルのランクアップができるという仕様なのだろう。ステージのチェックポイントには、ボスが立ちはだかっており、プレイヤーは使用するキャラクター、覚えているスキルの性能を生かしながら、ギミックを避けつつ、その打倒を目指す。全体のプレイ感としては、カジュアルさを重視しながらも、一定のやりごたえが得られるようなものとなるのではないか。 ※1…[NDC21]思わず恋するキャラ作り。「ブルーアーカイブ」のアートディレクター陣の講演レポート(4Gamer) ※2…ローグライクアクション『ヴァンパイアサバイバーズ』と近しいゲーム性を持つタイトルで構成されたサブジャンル。 昨今、モバイルゲームの領域では、『原神』や『崩壊:スターレイル』『ゼンレスゾーンゼロ』といった、リッチコンテンツを売りにするタイトルの台頭が著しい。今後も『無限大Ananta』や『Neverness to Everness』など、類似する注目作がリリースを控えている。これらの登場と成功は、ここ数年、さらには少し先の未来まで含めたゲーム業界の一大トレンドであると言っても過言ではない。一昔前にくらべると、勢いに陰りが見えつつある同市場で気を吐く、数少ないジャンルと言える。 『ステラソラ』が持つであろうゲームデザインは、こうしたトレンドと対極に存在するものである。「シンプルさ」「爽快感」「中毒性」といったキーワードは、どちらかと言えば、プリミティブなゲームの楽しみ方であり、上述のリッチコンテンツを掲げるタイトル群とは、明確に異なる性質を持つ。良い意味で“インディー”的なゲームづくりに対するアプローチで開発されているタイトルが『ステラソラ』なのではないだろうか。 飽和によって玉石混交の様相を呈するモバイルゲーム市場においては、ユーザーに選ばれることと同等、またはそれ以上に、「すでにプレイしているタイトルといかに両立して遊んでもらうか」が重要なテーマになりつつあると感じている。『ステラソラ』がトレンドのリッチコンテンツ側ではなく、カジュアル側に舵を切った背景には、開発期間以外にも、こうした事情が影響している可能性がある。 はたしてYostarの挑戦は、功を奏するだろうか。今後の動向に注目だ。
結木千尋