男の名はラジヤ・バンビ 城壁の完成を願い自らの命をマハラジャに捧げた
陽が傾き、暑さが幾分和らいできた頃、メヘラーンガル城からジヨードプルの城下町を見下ろした。 時のマハラジャであるラオ・ジョダがジョードプルの街づくりに着手したのが1459年。今から550年以上も前のことだ。メヘランガル城壁の着工も始められ、その後、歴代のマハラジャたちによって拡大していった壁は、全長5キロを超えるに至った。 こんな逸話がある。ラオ・ジョダが城壁を建設するにあたり、災難払いのために、人柱として一人の男がその基礎に生き埋めにされた。男の名はラジヤ・バンビ。城壁の無事な完成を願って自らの命を捧げたバンビの家族は、マハラジャから永遠の加護を約束されたという。現在も彼の子孫はジョダより譲られた敷地に住んでいる。 一人の男の命によって支えられたメヘランガルの城壁。そんな裏話を胸にこの城壁に立つと、橙色に変わって行く夕暮れの街並みが、なんだか哀愁を帯びてくるようにも思えた。 (2016年4月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォト・ジャーナル<インド~偉大なる領主マハラジャ>」の一部を抜粋したものです。