【#佐藤優のシン世界地図探索㊴】日本衰退の原因は数が多過ぎる大学にある?
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――気になる報道があります。科学誌『ネイチャー』のウェブ記事で「日本の研究はもはや世界トップクラスではない」ことが指摘されました。日本の大学研究のレベルが低下しているということです。 佐藤 原因は現象面ではなくて、「なぜ大学に良い人材が集まらないか?」という本質面ですよね。そういったことをやはり全体的に見直さないといけません。 ――何から始めれば良いのですか? 佐藤 今から44年前に刊行された、社会学者エズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を読むといいです。 ――当時、日本人が熱狂して読んだ本であります。 佐藤 そうです。「日本は素晴らしい国で世界の幹になっていく」とありますが、ひとつだけ日本を推奨できないところとして「大学」を挙げています。さらに大学について「本当にひどく、このままなら日本の衰退の原因になる」と言及しています。 ――それが的中した。 佐藤 とにかく、日本の大学のことだけはボロクソに書いてあって、構造的に難しい問題を孕(はら)んでいると述べています。これが予言通りになったわけですね。 ――構造的な問題とはなんですか? 佐藤 まず第一は大学受験の弊害で、高校レベルの基礎学力が弱くなっていることです。特に英語力と数学力です。 まず英語の学習環境は良くなってはいますが、英語力は落ちているのが現状です。理由は簡単で、会話中心のカリキュラムになっていて、英語が読めなくなっているからです。 そもそも外国語能力とは、読みが天井を作ります。正確に読むためには文法が必要です。日本語もそうですが、読んで分からない事は聞いても分かりません。ましてや、話せないし、書けないのです。読みが天井で、その天井が低くなっているから、英語力が低下しているというわけです。 それから、数学の低下している理由は簡単で、難関私立が三科目入試にしているためです。 ――数学がない!! 佐藤 そうです。まず中高一貫校で東大を狙わせるわけですが、中1~中2で明らかに数学の成績が劣位な子は、英国社の三科目を集中的に勉強させます。そして早慶を狙わせます。数学と理科は何も勉強しなくても単位をくれるので、安心してその三科目の勉強ができます。 そして、中2から早慶の受験を目指した形で特化した勉強をすると、早慶にはかなりの生徒が受かる。万が一、早慶に受からなくてもマーチ(明治、青山学院、立教、中央、法政)には受かります。 ――英語はなんでダメなんですか?