アジアの「脱炭素」のカギ握る日本 カンボジア進出企業の最前線 【WBS】
世界の二酸化炭素の排出量の6割を占めるのがアジアですが、アジアの「脱炭素化」を進めるための首脳会議が18日、東京で初めて行われました。日本が主導する枠組みで、そのカギを握るのが日本の企業と技術です。その取り組みを取材しました。 18日、東南アジアの首脳などが総理官邸に集まって開かれたのは、東南アジア9カ国とオーストラリアでつくるアジアの脱炭素を進める枠組み「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)」の初の首脳会合です。 AZECでは石炭火力発電の廃止を進める欧米とは一線を画し、各国の事情に応じた形で、再生エネルギーなどへの転換を進め、同時に経済成長を実現するのが狙いです。 首脳会合に合わせて、東南アジア各国と日本企業との協力に関する覚書も、30以上締結されました。例えば、総合商社の「双日」がインドネシアの大手不動産開発会社と結んだ覚書は、インドネシアにある工業団地を「まるごと脱炭素化」するプロジェクトです。 8割以上を石炭などの化石燃料による発電に依存しているインドネシア。 双日は、商社のネットワークを駆使して、太陽光やバイオマス、水素やアンモニアの活用などを通じ、インドネシア最大の工業団地を丸ごと脱炭素化することで合意。CO2の大幅な削減を目指します。 さらに18日、カンボジアの鉱業エネルギー省と協力のための覚書を結んだのが、バイオマス発電事業を展開する「イーレックス」です。 現在、大分県など国内5カ所で植物など自然由来の資源を燃料とするバイオマス発電所を展開しています。 バイオマス発電の燃料として使うのは、パーム油を抽出した後のパーム椰子の殻や木の廃材などから作ったペレット。燃やす際には二酸化炭素を排出しますが、木が成長する過程の光合成で二酸化炭素を吸収するため、それらが相殺されることでカーボンニュートラルになるのです。 「カンボジアではカシューナッツの殻とか、アカシアのチップなどが豊富に存在している。ほとんど使われていないので、それらをバイオマスの燃料として使っていく」(「イーレックスの本名均社長) カンボジアは、バイオマス発電の燃料となる資源が豊富なことから、2030年までに5基のバイオマス発電所の建設を目指すといいます。さらに、カンボジアでのバイオマス発電のために作った自然由来の燃料を、将来的に日本に輸出することも検討しているといいます。 「地元の企業も『一緒にやりたい』と言ってきている。しっかりと長期にわたってやっていきたい」(本名社長) さらに、機械部品や電子部品などを製造する「ミネベアミツミ」は、カンボジアで新たに太陽光発電事業に参入することを発表し、18日、カンボジアの鉱業エネルギー省と覚書を結びました。将来的に太陽光で発電した電力などを使って、カンボジアにある自社工場の電力も全て賄うといいます。 「ミネベアミツミ」の貝沼由久会長にカンボジアでの新事業の狙いを聞くと、「カンボジアに7000人の従業員がいるし、その規模をもっと大きくしたい。カンボジア政府もたくさんの製造業への投資の誘致ができる」と説明しました。 実は、ミネベアミツミは、フィリピンにある自社工場でも、大規模な太陽光発電システムを既に設置し、脱炭素の取り組みを進めています。 「フィリピンでもやって、今回カンボジアをやって、今度はタイでもやりたい。この辺がわれわれの中で輸出の50%を占めている。われわれが進出しているところで、少しでもカーボンフリーの電気を使っていきたい」(ミネベアミツミ 貝沼会長) こうした日本企業の取り組みについて、来日したカンボジアのラタナック鉱業エネルギー相は、「私たちも 日本企業ともっと協力していきたい。2050年までに(二酸化炭素の排出を)「ネットゼロ」にするため一緒に取り組む。気候変動と闘うためには一国だけでは達成できない。協力して取り組んでいく」と話します。 政府関係者は「ASEANの国々を中心に欧米の技術依存に対して歴史的に警戒感がある。中国などのように利権を求めず、これまで日本がASEANの国々への開発援助を続けてきたことも評価され、今回のAZECに繋がった」と話しました。 ※ワールドビジネスサテライト