【山脇明子のLA通信】期待されるがゆえに渡邊雄太の前に現れた壁…一回り大きくなるための糧に
2023-24シーズンも渡邊雄太(フェニックス・サンズ)、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)を筆頭に、バスケットボールの本場、アメリカで多くの日本人選手がプレーする。そんな彼らの活躍を取り上げるとともに、どんな思いでプレーをしているのかに注目。LA在住ライター、山脇明子氏がレポートする。 文=山脇明子
チームの起用法への戸惑いも多く…
12月22日のサクラメント・キングス戦を終えた渡邊雄太は、いつものように冷静さを保っていたものの、心の中にある憤りを隠せない様子だった。 「自分がリズムに乗れていないというのは、完全に自分の責任。僕がもっとやらなきゃいけないのも大前提として、久しぶりに使ってもらって、前半の出場3分ぐらいで引っ込められて、(点差が空いた)第4クオーターまで出番がなかった。一体僕に何をどうしてほしいのかというのが、正直わからない」 この試合、渡邊は11分42秒プレーし、2得点2リバウンドだった。第1クオーターに味方のターンオーバーによるキングスの速攻を止めようと2つ目のファウルを取られたあと交代となり、出場時間が2分17秒(同クオーター、画面に出ていた時間よりも53秒短くなるという異例のクロック見直しがあった)で、前半はその後出場機会がなかった。後半は19点を追う第4クオーターのスタートから出場し、計9分25秒プレーしたが、たまたまのタイミングだったのか、序盤スリーポイントをミスしたあと、ケビン・デュラントと交代で約2分半ベンチに下がった。点差を詰められないまま戻ったコートで、渡邊は、さらに2つのスリーポイントをミスした。リズムに乗るには、タフな使われ方だった。 「僕は選手の起用方法とか、そういう部分に関して不満を持ったり文句を言ったりしないと決めている」。かつて、渡邊は話していた。これまでも、不満を言えるのであれば、言いたいことは何度もあっただろう。そんな思いも胸にしまい込み努力してきた。 今でも、その気持ちに全く変わりはなく、「自分がもっと上手くならなきゃいけない」「どういう状況でも準備をしなきゃいけない」と繰り返す。出場時間が少なかったり、出場機会がなかった時にひたすらシューティング練習をして準備する姿勢も今までと変わらない。 ただ、「使えるかもしれない」と思われてキャンプ契約やツーウエー契約から始まる選手と、「戦力として欲しい」と求められて契約する選手では、「責任感」が全く違う。 渡邊は、12月8日のキングス戦ではスリーポイントが8本中3本の成功だったが、そのうちの2本が第4クオーターで、チームの追い上げに貢献した。だが、次のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で4本中1本のスリーポイントを決めて以来、スリーポイントが決まっていない。早く調子を取り戻してチームの役に立ちたい。だが、チーム自体もここ11試合で8敗と不調なことから、その機会がなかなか与えられないのだ。 ウォリアーズ戦の翌日に行われた4試合前の古巣ネッツ戦では、第1クオーターにワイドオープンのスリーポイントを2本外し、後半は残り3秒まで出番がなかった。前半2ファウルも取られていたことから、「今日は言い訳できない」としながらも、「欲を言えば後半も出してもらって挽回したかった」と唇を噛んだ。 「昨季も前半良くなくて、後半爆発した試合が何試合もあった」。それだけに2本のミスでその後チャンスをもらえなかったことが残念だった。 第4クオーター残り3秒に出場したのは、4点ビハインドの場面で、相手守備にとって外せないシューターである自らがいることで、「僕がおとりになって」デビン・ブッカーを打たせる作戦だった。コートに立っているだけでも自らの持ち味が役に立つと実感した。それだけにスリーポイントを決めてチームに貢献できなかったことが悔やまれた。 次のニューヨーク・ニックス戦では第1クオーターに39秒出場し、第2クオーター約4分半プレーしてシュート機会なし。それでも好守備を見せたが、後半は最後の2分20秒のみの出場。続く2試合は出場機会がなかった。 「(ネッツ戦で)前半にワイドオープンを2本外した。僕の場合は、そこができないと使ってもらえない」と渡邊。バスケットボールで、最初の2本のスリーポイントを外すこと自体、決して珍しいことではないが、NBAの強豪チームでは、それがローテーションに入れるかどうかに大きく響くということか。 「(最初の2本を外しても)その次の2本で決めれば(成功率)50%ですし、その次の3本のうち2本決めれば40%です。でも自分はそういう立場。1本1本の重みというか、プレッシャーはもちろんかかっているんですけど、それを乗り越えないと。乗り越えてこそはじめて本物のシューターになれる」と渡邊。 「今シーズン通して、一つ自分が良くないのは、いろいろ考え過ぎていること。昨季は一番下から始まって、上にあがっていくだけだったので、無心でその状況を楽しんでやれていたんですけど、今季になって、ちょっと期待される立場という中で、しっかり結果を残さなきゃいけないと必要以上に自分にプレッシャーをかけ過ぎていて、シュートのタッチだったり、悪くなっている部分もあるのかなと反省しています」