夫婦共働きの場合に、財布を「1つ」にするか「2つ」にするかの選択 ~折衷案のススメ~
別稿(※1)で共働き家庭の家計の管理についてお話ししました。その中で、たとえ夫のお金の使い方に不満があったとしても、いきなり財布を1つにするのは難しいということを申し上げました。 物価上昇に伴う十分な賃上げがされている給料の方ばかりではないので、家計が厳しい場合でも、単なる節約だけでは続きません。今回は、夫婦の財布を1つにする過程でしていただきたい折衷案の家計管理方法をお話しします。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
夫婦共働きといっても税金と社会保険のかたちはさまざま
2023年は「年収の壁」という言葉をネットのコラムやニュースで目にした方は多いでしょう。ネットの情報では、どうしても「得か損か」「メリットがあるのかないのか」という内容に偏りがちで、「結局は自分たちがどうするべきか」がわからなかったということがあると思います。 社会保険料や所得税を支払うというのはもったいないから、「扶養のままでいい」というパートの方もいらっしゃいますが、今の保険料の節約は将来的な老後資金の準備不足につながることもあります。ずっと扶養でいて年金保険料を支払っていない妻が受け取る老齢年金額は最大81万6000円(令和6年度価額)です。 共働きでも、妻がパートという勤務形態であれば「税と社会保険どちらも扶養」「税は扶養外、社会保険は扶養」「税と社会保険どちらも扶養外」など、税金と社会保険の関係は複数のパターンが考えられます。 今年は新NISAで投資を始めた方も多いでしょうが、どうしても投資では、「いくら儲かった」「元手の何倍か? 」など、短期的な利益を重視しがちです。しかし老後資金の準備は、まず公的年金を充実させ、上乗せとして企業年金やiDeCoなどが王道です。 これらをうまく利用するためにも、夫婦で何も知らずにいるのではなく、税金や社会保険料がどれくらい徴収されているかという金額をお互い理解しておきましょう。
夫婦で利用できる控除を最大限利用しよう
前段で、夫婦が税金や社会保険料をいくら徴収されるかということを把握しておくことを勧めましたが、次はどのように利用していくのかを考えてみましょう。 給料などから所得税が源泉徴収されている方は、年末調整を思い出してください。同じ収入だとしても、所得税は同じではありません。収入から、扶養家族やその人独自の状況であるひとり親控除や配偶者控除などの「人的控除」と、医療費控除や生命保険料控除、寄付金控除などの「物的控除」などの控除を引いたものが「所得」です。 これらの控除はそれぞれに要件はありますが、例えば、医療費控除の適用条件となるのは「生計を同一とする親族が負担する医療費」が対象となります。協会けんぽ、国民健康保険など、同じ保険である必要はないのです。 また、生命保険料なども、それぞれ最大12万円という控除がありますので、夫にすべての保険を契約させなくても、夫婦でこの上限を利用することができるのです。