驚安ドンキ、平均400円の商品を売って年間2兆円 原動力は権限委譲
主語が違うからちょっとヘン
「ドンキは型破り」 「ドンキは逆張り」 「ドンキは異端児」 メディアに取り上げられるとき、そんなフレーズがよく使われます。 所狭しと商品が並ぶ「圧縮陳列」、「情熱価格」のパッケージのやたらと長い文章、いかにもドンキな手描きPOP─。みなさんもドンキの店舗を訪れると、こうしたものを目にして「ドンキって他社の店と違うよね」と思うかもしれません。ましてや社員たちが社長の言うことすら聞かないとなれば、「ちょっとヘン」と思うでしょう。 僕なりに、このドンキが「ちょっとヘン」に思われる原因を考えてみました。 僕自身は、それは「主語」が違うからだと思っています。ドンキでは、常に主語を顧客に転換することが求められます。 例えば、一般的に真面目とは、自分が真面目にすることですよね。しかし、私たちの真面目とは、自分が真面目にすることではなく、お客さまにとっての真面目がドンキの真面目です。つまり、主語が自分ではなくお客さまなのです。どこまでお客さまを主語にして本気でできるか。これを徹底的に追求しているだけです。 例えば、大手では、ある商品が全店舗でそろえられないと棚から商品を一時的に引き上げます。ドンキでは、そもそも店によって置いてある商品が異なるということもありますが、そうしたことは起きません。 例えば、コロナの最中、マスクが全国的に足りなくなった際も、仕入れることができた店では、当社はマスクを店頭に全て出していました。全店舗でそろえられたら店頭に出すということではなく、それぞれの店の別々のお客さまにとりあえず役に立ちたい、という発想です。 そんなわけで、そもそも主語が違うから、変に見えてしまうのかなと思います。 「お店、買い場は楽しく、会社は真面目に」 これは安田会長が言い始めて、社内に根づいたフレーズです。ドンキでは、売り場のことを「買い場」と呼ぶところにも、主語の転換が象徴されています。お客さまに見えるところは楽しく、会社は真面目に、というのがドンキのスタンスです。 権限委譲もこの発想が基になっています。各店舗の買い場担当者に権限を持たせるのは、本部から見たら不合理かもしれません。しかし、財布を握っているお客さまを目の前で見ている現場の人に権限があって、即座にお客さまの声に応えられるほうが売れるよね、というのがドンキの合理的な発想の根っこにあります。 僕たちがリブランディングした情熱価格は、パッケージに書かれている商品名が長いことで話題を呼びました。メディアにも、奇をてらったかのように取り上げられました。しかし、私たちは奇策を打っているわけではありません。「正面突破」しているだけです。いつでもどこでも正面突破しかしないから、かえって変に見えるのです。 私たちからすると、当たり前のことをやっているだけです。そんなことを、ここから、PB(プライベートブランド)の物語を中心に具体的にお伝えしようと思います。 * * * どうもありがとうございました。ここから先は新刊『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』をぜひお読みいただければと思います。「ドン・キホーテ」を日本第4位の小売企業にまで押し上げた、“非常識”だけど“オモシロイ”、経営とマーケティング、人材育成手法などについて、吉田社長とキーパソンが本当の話を明かします。(編集部)
吉田 直樹