「賃金を上げろ!さもなければファストフードに転職する」、米カリフォルニアの最低賃金は20ドルに到達
■ 「知事はカリフォルニア州を破壊している」 来店客によるセルフ注文端末の「キオスク」や自動でハンバーガーを作る「バーガーボッツ(Burger Bots)」などの設備に投資すると同時に雇用を減らすフードチェーンが増えていくかもしれない。 このほか、賃金の上昇分を、従業員の福利厚生カットで補おうとする企業が出てくる可能性もある。 影響は、ファストフード以外の業種にも広がりそうだ。 筆者の知り合いのレストラン経営者や食品メーカーは、ファストフードの最低賃金引き上げが州議会で承認されてすぐに「賃金を上げろ! さもなければファストフードに転職する」と従業員に脅されたという。 通学先の大学の図書館でアルバイトをしている筆者の長女もこのニュースを見てすぐにマクドナルドの求人状況を調べたそうだ。まったく関係ない産業にもファストフード発の賃上げの波が押し寄せる。けっして対岸の火事ではないのだ。 先日、FOXニュースで、ロサンゼルスにある小規模なレストランの女性オーナーが悲痛な叫びをあげているのを見た。 「私たち小さなレストラン経営者はなんとかパンデミックに打ち勝った。と思ったら今度は最低賃金の急激な上昇だ。私も含め、多くのレストラン経営者が生き残れるか分からない」 「多くの従業員が解雇されることになろう」 「人々は目を覚ますべきだ。サーカスを見に行って、ファンシーな手品を見せられているあいだに誰かがポケットから金を盗まれているのと同じだ」 「ギャビン・ニューサム州知事はカリフォルニア州を破壊している」
■ 政治家のアピールに使われる最低賃金引き上げ ここへきて、ファストフードチェーンの従業員だけでなく、州全体の最低賃金を20ドルに引き上げるべく、各団体による政治家へのロビイングが活発になっているようだ。当然の反応といえよう。 最低賃金の引き上げは政治家にとっては簡単かつ明確、何より選挙民にアピールできる政策といえよう。生活に苦しむ低賃金労働者も必死にこれを訴える。 しかし、いわば「人工的」に引き上げられた賃金は、その水準や内容によっては経済的合理性を伴わず、巡り巡って労働者が以前より苦しむ結果につながる可能性もある。 今回の最低賃金の引き上げの影響は、今後どのように広がるのだろうか。
水野 亮