「賃金を上げろ!さもなければファストフードに転職する」、米カリフォルニアの最低賃金は20ドルに到達
■ 日本の最低時給はロサンゼルスの3分の1 2020年3月時点では3.5%の上昇であったが、2022年9月には5.8%増まで上昇した。2023年以降は落ち着きを見せているが、それでも2024年3月時点では米国全体が4.1%増、ロサンゼルス都市圏が4.4%増となり、コロナ禍前の水準を大きく上回っている。 賃金上昇が続く要因の一つとして、カリフォルニア州政府や州内の都市が毎年改定している最低賃金の引き上げがある。最低賃金は、基本的には物価上昇率に基づき引き上げられる。ゆえに物価上昇が激しい昨今、最低賃金が急速に上昇しているのだ。 その結果、カリフォルニア州の最低賃金はコロナ禍前の2019年時点で時給12ドル程度であったが、2021年には13ドル、2023年には15.50ドル、そして2024年には16ドルに引き上げられた。 州内の都市では、州全体を上回る最低賃金が導入されているところがある。ロサンゼルス市では2019年時点で13.25ドルだったのが、2021年に15ドル、2023年に16.78ドルとなった。そして2024年6月には17.28ドルに引き上げられる予定だ。 日本でも最低賃金は2023年10月の改定で大幅に引き上げられたが、それでも全国加重平均額は時給1004円(1ドル=156円換算で約6.4ドル)と、ロサンゼルス市に比べると実に3分の1程度にとどまる。 カリフォルニア州内のファストフードチェーンで働く従業員は50万人超にのぼる。20ドルに到達した最低賃金のアップは当然のことながら朗報であり、こんな急ピッチでの賃金上昇は日本の感覚ではうらやましく感じるかもしれない。 だが、いいことばかりではない。当然、企業は対策を施すことになるからだ。
■ バーガーキング、タコベル…軒並み値上げに動く まず職場で離職が増える可能性がある。最低賃金は、単に企業が採用に際して提示する給与条件に影響するだけにとどまらない。すでに働いている従業員のあいだでも同時に賃上げを求める声が出てくる可能性がある。 労働者の「売り手市場」の状況ではその傾向はますます強くなる。従業員からの賃上げ要求に迅速に対応できず、結果として離職者の増加につながるケースも出てくる。 さらに商品の値上げである。 ある調査によると、最低賃金引き上げのわずか1カ月で「バーガーキング」は2%、タコスのファストフードチェーンの「タコベル」は3%、メキシカンファストフードの「チポレ」は7.5%、ハンバーガーチェーンの「ウェンディーズ」は8%と、それぞれ値上げしたと報じられている。言うまでもないが、商品の値上げは消費者である働き手自身にも跳ね返ってくる。 商品価格を維持する代わりに雇用や一人あたり労働時間を減らすといった対応も考えられる。ピザチェーンの「ピザハット」は、最低賃金の引き上げが決まってすぐに州内の1200人を超える配達員の解雇を発表した。また、同社のいくつかのチェーン店でデリバリーサービスを廃止したことが明らかになった。 同じくピザチェーンの「エクスカリバーピザ」は、4月に73人の配達員を解雇した。ただし、「当社はデリバリーサービスを第三者に手渡すことにした。ゆえに解雇というよりは雇用移転と見ている」とし、さらには「多くのレストラン経営者は経営コストの上昇を受けて同じような対応を採っている」と付け加えている。 労働者ではなく技術に投資する企業も出てこよう。