『キングダム 大将軍の帰還』山崎賢人と大沢たかおがシリーズを振り返る「みんなで”天下の大将軍“を目指してきたチームだった」
2019年に公開された第1作を皮切りに、シリーズ3作すべてが興行収入50億円超え、観客動員数1000万人以上を記録してきた「キングダム」。その最新作にして集大成となる『キングダム 大将軍の帰還』の公開を迎えるにあたり、シリーズを通して主人公の信(しん)を演じてきた山崎賢人と王騎(おうき)役の大沢たかおは「この景色を見るため、この『大将軍の帰還』を観てもらうためにいままでやってきました」と感慨深げに口を揃える。 【写真を見る】「キングダム」最終章を迎えた山崎賢人×大沢たかお。信と王騎を演じ続けた2人が、いま想うこととは? コミックス累計発行部数1億部を突破した原泰久の人気マンガを、原作の壮大なスケールそのままに実写映画化した本シリーズは、中国の春秋戦国時代を舞台に、“天下の大将軍”になるという夢を抱く戦災孤児の信と、中華統一を目指す若き秦国王の嬴政(えいせい/吉沢亮)の活躍を描く物語。今作では、前作『キングダム 運命の炎』(23)で信と王騎が隣国の趙と総力戦を繰り広げた「馬陽の戦い」の続きから描かれていく。敵将を討った信の前に現れた趙国の総大将、龐煖(ほうけん/吉川晃司)。彼の圧倒的な力の前に飛信隊の仲間たちは次々と命を落とし、致命傷を負った信を背負って決死の脱出を試みる。一方、戦局を見守っていた王騎は、劣勢を覆すべく再び戦地に舞い戻ることに。 ■「信と王騎のような関係性が、山崎くんと構築できたのではないかと思います」(大沢) 撮影を振り返り「『キングダム』の撮影は最高に楽しくてやりがいがあるものでした。作品自体にパワーがありますし、みんなが熱い思いを持って取り組んでいるのも最高で、こんなに充実している時間ってほかにないなと常に思っていました」と、山崎は楽しみながらも全力投球で信という役柄を演じてきたことを振り返る。そして「信は自分一人の力では絶対できなかった役。本当に皆さんに支えてもらいながらここまで演じてこられたという思いです」と、スタッフや共演者、支持してくれたファンへの感謝をあらわに。 また、作品を重ねるごとに成長していく信を演じるにあたり山崎は「熱量をずっと大切にしていましたし、まっすぐでストレートに濁りのない演技をしたいという想いは持ち続けていました。今回は前作からの地続きの流れでしたので、そうした意識が大きく変わることはありませんでした。ですが、自分一人じゃなくて飛信隊のみんなで夢を見ている、みんなで戦っているということをより強く自覚し、みんなをまとめていこうという意識はこれまで以上にありました」。 一方、原作のなかでも随一の人気を誇る王騎を演じてきた大沢は、オファーを受けた当初から「難易度が非常に高く、プレッシャーがあった」と告白。「自分には到底できる役ではないと思っていたからこそ、これもひとつの選択。ダメならば叩かれなきゃいけないし、役者も辞めなければいけない。それほど責任重大な役でした」と、途方もない覚悟を胸に挑んでいたことを明かすと「こういう王騎であってほしいという意見を聞けばもっと頑張る。体が細いと言われれば、最後の最後までトレーニングをする。そうやって取り組んでいました」と、このうえなくストイック。 それだけに役に対する思い入れもひとしおだったようで、本作のクランクアップ時を振り返りながら「毎日必死でやって、気が付いたら撮影が終わっていました。その時に、この鎧を脱いだらもう二度と着ることはないんだと思ってしんどかったです。ある日突然自分の生きがいを奪われたような感じがしました。でもこれほど幸せな時間を過ごした以上、別れが悲しいのは仕方がないこと。一緒に過ごした時間が濃ければ濃いほど、愛が深ければ深いほど別れは悲しいものですから」と、名残惜しんだ。 1作目ではクライマックスシーンまで共演がなかった山崎と大沢だが、2作目の『キングダム2 遥かなる大地へ』(22)からは共演シーンも増え、信と王騎は共に戦地へと赴く。「王騎将軍に言われることがよくわからなくても、絶対だと思える。そんな信頼関係があるからこそ、飛信隊の持ち味である、とにかくまっすぐに進むことだけに集中ができるんです」と信やその仲間たちと王騎との関係性について語る山崎。その信頼関係は、役を超えて山崎と大沢の関係にも通じているようだ。 ■「本当に王騎将軍のように背中を見せてくださる大沢さんが、かっこいいなと思っていました」(山崎) 「今回の趙軍との戦いのシーンはあまりにも壮大で、とても大変な撮影でしたが、王騎将軍の背中とか戦いぶりを間近で見ることが多かったので、とにかく自分は信として、自分の責任を果たすのだという気持ちを強く持って演じていました」と、撮影現場での大沢から多くを学んだことを明かす山崎。「大沢さんは言葉でアドバイスをくれたり演技について語るわけでもなく、本当に王騎将軍のようにその姿を見せてくださる。それがまたかっこいいなと思っていました」。 それについては大沢も「王騎の言葉は信へのメッセージ。自分の人生を通じて感じたことを誠実に伝えなければという想いはあります。ただ王騎は面と向かってなにかを教えるタイプではないので、一緒にいて戦う姿を見せることが、王騎なりの伝え方なんです」と明かし、「現場では信と王騎と同じ距離感でいることをすごく意識しました。最初は緊張感のある距離のほうがいいと思いましたが、2作目以降は自然にいろんなことを話すようになり、だんだんと信と王騎のような関係性が山崎くんとも構築できたのではないかと思います」。 また大沢は「準備期間も入れたら7年近く、山崎くんの成長ぶりをたくさん見させてもらいましたが、同時に僕も成長させてもらいました。それはほかの俳優さんたちも同様で、この作品に関わる全員が成長していると思うんです。映画のなかと同じようにみんなで戦って挑戦して、みんなで天下の大将軍を目指して行った。そういったチームだったような気がします」と、共に駆け抜けてきた仲間たちを称えた。 信として過ごした歳月に「長かったような、あっという間だったような気もします」と思いを馳せる山崎。「20代は『キングダム』と信と一緒に生きてきた感覚があるので、それが終わるという寂しさと、やったぞという達成感、そしてまた凄まじい作品を世の中に放つんだというワクワク感がいまはあります」と、公開を目前に控えた心境を吐露する。 一方で大沢も「キングダム」シリーズを振り返り、「俳優としてだけでなく、自分の人生にとってもかけがえのない出会いであり、時間でした。そんな作品に出会えることなんて一度あるかどうか、それほど奇跡的なこと。僕はこのチームの一員でいれて本当にすごくうれしかったですし、宝物を与えてくれた皆さんと出会えた日々に感謝しかないです」と何度も喜びを噛みしめる。 そして山崎は、最終章を観た感想を訊かれると「映画が始まってすぐ、回想シーンからもう泣きそうになりました(笑)」と即答。「1作目で信と王騎が出会い、2作目と3作目でいろんなことがありましたが、今回はずっとクライマックスが続く感じです。『キングダム』の真骨頂が全部詰まっている。『大将軍の帰還』のために、これまでの3作品があったといっても過言ではないので、本当に多くの人に何回でも観ていただきたい。それが僕の現段階の夢です。なにより僕も、早くもう一回観たいです」。 ※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記 構成・文/久保田 和馬