<一部ネタバレあり>今までとは違う⁈ フィリピン発ゾンビホラー「アウトサイド」
「先輩」の演技はすごい⁈
せっかくなので、4人家族だけでなく、ゾンビにも焦点を当てる。今作は「フィリピン初のゾンビ映画」だそうだが、登場するゾンビの外見や動きは本格的だ。ただ、「新感染 ファイナル・エクスプレス」やその続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」に出てきたゾンビの演技を思い出すと、ゾンビの「先輩」たちの怖さ、迫力はすごいな、とも思った。今作はホラーが最大の主眼ではないのかもしれないが、今後はぜひ、過去の先輩から、吸収できる部分は取り入れてほしい。 ちなみに、いろいろなゾンビ映画を見てきた筆者が気付いた点がある。「アウトサイド」のゾンビは、少しだけ人間の言葉をしゃべる。他の作品だと、体中にウイルスが回ってからだと「アー」「ウー」などしか言えなくなるが、何と話しているのかは作中で確かめてみてほしい。 ついでに言えば、「新感染」シリーズに出てくるゾンビは、とにかく足が速い。男女とも主人公たちを追いかける脚力がすさまじく、「新感染」の世界では感染すると体が一気に強靱(きょうじん)になるのかと、私はひそかな仮説を立てている。ゾンビもいろいろ、である。
「ゾンビ映画ならでは」の結末
さて、冒頭に書いた「ゾンビ映画ならでは」の点だ。物語の終盤の出来事でもあるので詳しくは触れないが、作中で出番の多い、ある人物にウイルス感染の危機が迫る。そして、それを見たほかの人物がとった意外な行動は――。確かに、例えば銃の撃ち合いで登場人物がピンチに陥るといった設定では、このストーリー展開にはできないという人間ドラマが最後に待っている。 今作に限らないが、ゾンビの大群は極限の世界を描く「装置」として、いい素材なのだろうと思う。果てしなく追い詰められると、人間は本性が現れる(私はゾンビに襲われたり、宇宙船の襲来を受けたりしたことがないので、確信はないけれど)。 思えば「新感染」シリーズで描かれたのも、極限の状況に追い込まれた主人公たちの家族愛だった。さて「アウトサイド」や、未来のフィリピンから放たれるゾンビ映画が描く世界は……。オンラインの動画配信サービスの普及で、海外作品にも格段に触れやすい環境になった今、楽しみは尽きない。 Netflix映画「アウトサイド」は独占配信中。
毎日新聞学芸部記者 屋代尚則