立候補後にも出馬辞退って出来るの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
突然の選挙の場合
任期満了に伴う選挙であれば、告示日も容易に想像でき、そこから逆算してある政党は現職を押すとか、別の政党は現職が強そうだから候補者調整をして告示前に一本化しておくというのもしやすいでしょう。しかし現職が突然死去したり、辞職したりすると5日以内に選挙管理委員会に通知し、50日以内に選挙を実施しなければなりません。知事選を例に取ると告示は投票日の17日前と決まっています。すると「いきなりの死去」「いきなりの辞職」で選挙など何も考えていなかった各陣営が、その一報を聞いてから1か月強で候補者を決めないと間に合いません。かなりタイトな日程となり、しばしば調整が不十分なまま届出=告示日がやってくる訳です。 結局、「立候補後」を告示後とみなせば、投票所から「出馬辞退」を宣言した名を消し去るという完璧な辞退はできません。四角四面にいえば、それが唯一可能なのは「候補者の死亡」です。
アメリカにはない「告示」制度
なお窮屈にも思える日本の告示制度はアメリカにはありません。大統領から市長に至るまで決まっているのは投票日だけ。したがって政治家は年中選挙活動をしているのと同じです。もっとも突然選挙当日になるわけではなく、党の集会など出馬した候補者ならば来てアピールするのが当然という場がいくつも設けられていて、有権者もそれを通じてとことん時間をかけて候補者の人品骨柄を見抜いていく制度です。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】