制作陣が『モアナと伝説の海2』の舞台裏を語る!実写版の情報も「アニメからのイースターエッグが隠れているんじゃないかと」
第89回アカデミー賞にノミネートされた『モアナと伝説の海』(16)は、海を愛する、海に選ばれし少女モアナが島を救うため壮大な冒険に出発する物語。続編となる『モアナと伝説の海2』の日本公開を12月6日(金)に控え、デイブ・デリック・ジュニア監督、脚本と製作総指揮を務めたジャレッド・ブッシュ、共同監督のジェイソン・ハンド、共同監督、脚本のデイナ・ルドゥー・ミラー、そして音楽を手掛けたアビゲイル・バーロウとエミリー・ベアーなど、モアナの新しい冒険を作り上げたクリエイターたちに話を聞いた。 【写真を見る】実写版「モアナ」にも出演予定のドウェイン・ジョンソン!ハワイプレミアでビッグスマイル 続編企画の発端は、3年ほど前に遡る。脚本と製作総指揮を務めたブッシュは、「8年前に『モアナと伝説の海』が公開されて以来、ディズニー・アニメーションの社内では、モアナの物語を続けたいという想いが渦巻いていました。前作では、モアナは旅を終えて1000年に一人の“導く者”となりました。3年半ほど前から、私たちは彼女の次の旅がなにになるのかについて話し始めました。この物語では、モアナのアイデンティティと、自分を発見する旅をいかに続けるかを考えています。自分は何者なのかがわかってきても、人生の節目節目に自分を再定義しなければならなくなります。モアナがどんな人物に成長するのか、そして海でなにを見つけるのか、ということを描こうと考えました」と語る。 「前作が、モアナが過去と再びつながる物語だったとすれば、今作は彼女が大切な人たちのために新しい未来を築く物語です。モアナがこれからどんなリーダーになるのか、その鍵を握るのが3歳の妹、シメアの存在です。姉妹のすばらしい関係は、モアナが未来になにを望んでいるのかを示すものでもあります」と、共同監督、脚本のミラーが付け加える。モアナが大好きで、片時も離れたくないシメアの愛らしさは、前作の冒頭に出てくるモアナの幼少期を思わせる。シメアの名前は、「ストーリーテラーとして、私たちはリサーチや自身の経験からアイデアを得ます」と語るデリック・ジュニア監督の実娘の名前から取られている。 前作に引き続き、モアナ役のアウリイ・クラヴァーリョ、マウイ役のドウェイン・ジョンソンが声の出演として戻ってきたことも、映画のストーリーとリンクする。「アフレコにやってきたアウリイは、すぐにモアナ役にぴったりと戻りました。彼女の口から発せられたセリフを聞いた瞬間、私たちはみんな、『ああ、モアナだ』と感慨深かったです」とハンドが言うと、「アウリイは、モアナのキャラクターをとても大切に思っています。自分の人生とも強いつながりを感じているようです。一作目の映画以来、彼女は多くの人生経験を積んできました。そして、モアナのように、彼女にはこれから見つけていくだろう未来がたくさんあります。そのことを強く感じました」とデリック・ジュニア監督は強調し、未来を切り拓くモアナの新しい冒険は、とてもパーソナルかつ、多くの人々に訴えかける物語になっていると結んだ。 リン=マニュエル・ミランダが手掛けた前作の主題歌「どこまでも ~How Far I’ll Go~」は第89回アカデミー主題歌賞にノミネートされている。今作の音楽は、「The Unofficial Bridgerton Musical」で第64回グラミー賞最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を同部門最年少受賞したアビゲイル・バーロウとエミリー・ベアーがバトンを引き継いだ。 ベアーは「16歳から19歳のころの自分を思い返してみると、とても大きな変化だったし、まったく違う人間になっていたと思います。だから、モアナやマウイの歌声も進化させたかったし、モアナが新たな海原に乗りだし、未知の領域に踏み込んでいくにつれて、サウンドトラックにも広がりを持たせたいと考えました」と音楽制作のこだわりを語る。 劇中歌の「帰ってきた、本当のわたしに」は、モアナの世界が戻ってきたと観客にも伝えるアップテンポの曲だ。共同監督のジェイソン・ハンドは、「エミリーとアビゲイルは、私たちを音楽の旅に連れて行ってくれました。『帰ってきた、本当のわたしに』を初めて聴いた瞬間は、私たちみんながこのすばらしい世界に戻ってきたということを、本当にリアルに感じました。『ビヨンド ~越えてゆこう~』は、モアナが歌うすばらしいアンセムで、人生の過渡期にいる彼女が可愛い妹を持ったことで、人生に対する思いや視点が変わったということを表しています。そして、映画の中で歌われる楽曲のひとつひとつが、モアナの新たな進化を物語るのにとても役立っています」と、2人の若きアーティストによる音楽を大絶賛する。 『モアナと伝説の海』は、この『モアナと伝説の海2』を挟み、実写版の製作も進行中。ブッシュとミラー、そしてマウイ役のジョンソンは、同時に実写版プロジェクトにも関わっている。「実写版のために第1作目を振り返り、彼女の人生と旅についてじっくり考えたことが、『モアナ2』の物語にも影響を与えました。ということで、実写版にもアニメーションからのイースターエッグが隠れているんじゃないかと思います」と、ブッシュはほのめかした。『モアナと伝説の海2』そして実写版ともに、海洋文化トラスト(文化コンサルタント)のチームが関わっている。デリック・ジュニア監督とミラーはサモア系の血筋をひき、トラストと共に徹底的なリサーチを行なっている。ミラーは、「この海洋文化トラストは、太平洋全域の島々から集まった専門家で構成されていて、ダンス、言語、植物学、航海術に至るまで、あらゆる分野の専門家です。映画製作のプロセスを通じて彼らと協力し、会話を交わしてきました。この映画の多くのシーンやモアナの冒険は、私たちがコンサルタントと交わした会話に直接インスパイアされたものです」と語る。 コンサルタントとの会話が、楽曲のクリエイティビティにも影響を与えたそうだ。音楽を担当したベアーはこう思い返す。「実在の“ウェイファインダー(導く者)”の方と話した際に、『迷うことは魔法を見つけるための道です』とおっしゃっていました。私たちはその言葉を書き留め、それが『迷え!』という曲のインスピレーションとなり、映画全体を通じたテーマとなりました」。 日本よりもひと足早く、感謝祭前の11月27日に全米公開された『モアナと伝説の海2』は、大ヒットスタートを記録し、2019年の『アナと雪の女王2』や2013年の『ハンガー・ゲーム』を抜いて、北米における感謝祭の週末の史上最大の興行収入を記録すると予想されている。この冬は、モアナの物語が世界中の海原を進んでいくことだろう。 取材・文/平井伊都子