『虎に翼』メイクに依存しない伊藤沙莉の“加齢”の表現 “老い”の名演は近年の朝ドラでも
更年期の不調も真正面から描いた『虎に翼』
『虎に翼』では、女学生の寅子が法律を学び始め、弁護士を経て、裁判官になっていく間に、少しずつ年齢を重ねていく様子を、主演の伊藤が自然に表現している。年と共に髪型は変わったが、それほどメイクに頼ることなく、顔の表情や体の動かし方に少しずつ変化を出し、少女から大人の女性になり、やがて中高年化していく寅子の変遷を体現している伊藤の演技は、本当に素晴らしいと思う。 また、『虎に翼』は、寅子の更年期の不調をも取り上げていたのが印象的だ。伊藤による、更年期の症状の1つである“ホットフラッシュ”などの演技は、視聴者から共感を得るほど、ヒロインが年を重ねることをリアルに綴っていた。加齢による変化を真正面から描いた朝ドラとして、後世に語り継がれるに違いない。 最近では、寅子が老眼鏡をかけて新聞を読んでいる描写もある。50代後半で、裁判官としてバリバリ働いている寅子は、仕事では熟練の域に達し、家庭では孫のいる祖母になった。東京家庭裁判所少年部部長の寅子は、まだまだ成し遂げなければならない案件も山積みだし、さらに出世すると思われるので、視聴者としては最終回まで寅子が活躍する姿を楽しみたい。そんな寅子を、最晩年まで熱演し続けであろう伊藤への期待が膨らむばかりだ。
清水久美子