「終わり良ければすべて良し」では失敗を繰り返すだけだ
けが人と過密日程を言い訳に用い、パフォーマンスが上向かない理由を曖昧なジャッジに逃げてばかりいた。「われわれは毎試合のように成長している」と、だれも納得しないコメントでメディアの不評を買いもした。
エリク・テンハフ監督である。
2-1の勝利を収めたシティとのFAカップ決勝を最後に、マンチェスター・ユナイテッドを去る公算が非常に大きい。
志半ばの退陣には忸怩たる思いがあるだろう。諸悪の根源がグレイザー・ファミリーだからだ。試合内容には無関心で、大型のCM契約を優先するクラブ運営には、ルイ・ファン・ハールのような古強者ですら辟易としていた。
サポーターも忌み嫌うグレイザー・ファミリーの悪政を踏まえ、オランダの『Voetbal International』(フットボール専門メディア)は次のように報じていた。
「公式戦の勝率は、サー・アレックス・ファーガソンの59・7%、ジョゼ・モウリーニョの58・3%に次ぐ57・89%だ。昨シーズンはリーグカップを、今シーズンはFAカップを制した。アレハンドロ・ガルナチョやコビー・メイヌーを育てた手腕は、新執行部『INEOS』にも支持されている」
だが、イングランドの大手メディアからポジティヴな声はほとんど聞こえてこない。有能な選手を揃えているにもかかわらずワースト記録を上塗りした責任は、やはりテンハフが負うべきだとの論調が多数派を占めている。
2023/24シーズンの被シュート数は660本。プレミアリーグから降格したシェフィールド・ユナイテッドの671本に次ぐワースト2であり、歴代でもワースト3の恥をさらした。
オールド・トラッフォードの公式戦9敗はクラブ創設後初の屈辱だ。57失点は、プレミアリーグ発足後では最低のデータである。
また、15パターンにも及ぶCBの組合せ(先発)は、これまたプレミアリーグから降格したルートンの18パターンに次ぐワースト2だ。最多コンビはジョニー・エヴァンズとラファエル・ヴァランの6試合。両選手とも23/24シーズンかぎりで退団する。 負傷者続出に伴う応急処置だとしても、CBの前に3人のMFを配したり、被ポゼッション時の動きを工夫したり、なんらかのプランで応じるのが監督だ。