【強制不妊訴訟 最高裁「違憲」の統一判断】浜松の武藤さん涙「みんな救われる」 差別ない世の中を切望【動画あり】
「みんなが救われる。本当に良かった」。旧優生保護法下での強制不妊手術を巡り、最高裁大法廷が旧法を違憲とし、国の賠償責任を認める統一判断を示した3日、同種の訴訟を起こした視覚障害のある武藤千重子さん(75)=浜松市中央区=は、不安な思いを抱え続けた4年間の裁判を振り返り涙ぐんだ。 【動画】浜松の武藤さん涙「みんな救われる」 差別ない世の中を切望 強制不妊訴訟 最高裁「違憲」の統一判断 弁護団長の大橋昭夫弁護士と共に、自宅のテレビでニュース速報を聞いた武藤さん。自身の訴訟では、静岡地裁浜松支部が5月に国の賠償責任を認める判決を出したが、国が控訴していた。今後は最高裁判断の枠組みに従うことになるため勝訴が決定的となり、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。 裁判が進む中、旧法により国が強制手術を推進した事実を深く知ることになった。「国が障害者を劣った存在と位置づけていたと改めて認識させられた」と胸を深くえぐられた。 それでも、近年は日々の暮らしで周囲から差別と感じる対応をされることが減った。「10年前なら、この判決は出なかった。時代は変わっている」との実感を持つ。「いまさら国の偉い人に謝ってほしいなんて思わない。その代わり、差別がない世の中をつくる姿勢を見せ続けてほしい」と強く求めた。 大橋弁護士は「顔と名前を出して訴訟に踏み切った勇気ある姿が、裁判官の心を動かす大きな力になったはずだ」と武藤さんをねぎらった。 ■静岡県内2訴訟 勝訴の公算高まる 最高裁が示した統一判断は後続の同種訴訟にも大きな影響を与える。浜松市の武藤千重子さんと、聴覚に障害のある県内女性が起こした静岡県内2訴訟で原告弁護団長を務める大橋昭夫弁護士は「国側が主張を取り下げ、和解という形で勝訴になる可能性が高い」と見通しを語った。 最高裁判断は争点の「除斥期間」について信義則に反し、権利の乱用にあたるとして適用しなかった。大橋弁護士は「細かい条件がなく、県内の2人をはじめ多くの原告に当てはめられる良い判決」と評価した。一時金を支給する現状の救済法では不十分だとして「国の責任を明確にし、多くの被害者を救うための新たな法律を制定すべき」との考えを示した。 弁護団事務局長の佐野雅則弁護士は「全面解決となる判決だった。国には裁判を起こしていない被害者を含めた救済の宣言と謝罪を求めたい」と語った。 ■弁護団「引き続き全力で」 弁護団は3日夜、「優生思想および障害者に対する偏見差別の解消に向けて、引き続き全力で活動する」との声明を出した。
静岡新聞社