「イケメン」力で福島のイメージ変えろ パフォーマンス集団が旗揚げ
福島の「イケメン」集団が、歌や演技で福島のイメージ打破に取り組んでいる。パフォーマンス集団「ロメオパラディッソ」の旗揚げ公演が11月、福島市内で開かれた。震災後、「福島の大人が頼りない」「男性の存在感が薄い」などと感じた地元の男たちが立ち上げた。目指すは「男版宝塚」だという。
「福島の大人は嫌い」
「福島の大人は嫌い」。 設立メンバーでNPO法人理事の押田一秀さん(32)は、福島県内の中高生から、こうした趣旨の声をきいた。 福島県は原発事故や放射能汚染に直面した。押田さんは、その克服策よりも、助成金や賠償金に頼ったり不満をこぼす県民の姿が、ニュースなどを通じて浸透しているためと感じた。飯舘村出身の避難者で、主催団体の代表理事、佐藤健太さん(31)は「福島には楽しいことがある」との思いを形にしたかった。 ロメオは「ローカル・メンズ・オーガニゼーション(地方の男性の集まり)」の略。公募で、福島県を中心に全国から17~47歳の男性30人が集まった。歌やダンスが得意な人だけでなく、うつ病で「新たな人生」を目指した人もいるという。 関心をひくため、「イケメン」を打ち出した。容姿に加えて、鍛えた体や取り組む熱意もアピールした。旗揚げ公演のポスターでは裸の背中で訴える姿をみせ、「かっこいい大人が背中をみせる」との意味を込めた。 ネット上で資金提供を募るクラウドファンディングのサイト「READYFOR?」を通じて200万円を調達した。共感が広がり、Facebookの「いいね」は異例の7000近くに増えた。
舞台経験者はわずか2人
メンバーのうち10人は「ロメオ城」と呼ばれるコンクリートむき出しの建物で共同生活を送った。舞台経験者はわずか2人。演出家が演技の基礎を連日指導した。仕事を終えた夜に練習を繰り返し、大道具は公演直前にようやく完成した。
11月16日の公演内容は、売れないバンド5人組がタイムスリップする2万年後の未来が舞台。口で音を作る「ヒューマンビートボックス」のリズムが特徴的で、歌やダンスを随所に取り入れた。放射能問題は直接触れていないが、「耳をふさぎたくなる状況だ」など示唆する場面はある。 動画URL:http://www.youtube.com/watch?v=O9wKEUjS4RQ (旗揚げ公演の様子) 昼夜2公演に計1400人の観客が詰めかけた。 約2時間の公演が終わると、観客は立ち上がって拍手を続け、会場は熱気にあふれた。福島市内の中学2年の女子生徒(14)は「大きな声で歌やダンスをしていた。男らしくて、心打たれた」と話した。