読書中の8割は文字を見ていない・・・なぜ目の動きを速くしても本の速読できないのか
大量の情報があふれる現代、「必要な情報をできるだけ早く、頭に効果的に叩き込みたい!」と考える人は多いのではないでしょうか。巷にはさまざまなインプット法があふれていますが、残念ながらそのほとんどに科学的根拠がありません。 スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長である星友啓さんの著書『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』では、最新の科学が明らかにした効果的なインプット術、記憶に定着させるメソッド、モチベーション管理の方法、AI時代の情報の見分け方などを詳しく紹介しています。 【画像でわかる】文字がくっきり見える範囲
本書の中から、今回は「脳とインプット」について、一部抜粋・編集してご紹介いたします。 ■速読の残念な真実 分厚い本をパラパラとめくるだけで内容がわかる、超人のような速読を行う人をテレビなどで見て、「私も身につけたい」と思った人は少なくないでしょう。 速読者はどのように言語イメージをインプットしているのでしょうか。例えば、本のページをパッと一瞥したときに、ページ全体が視界に入ってくる。そして、そこに書いてある言語イメージが一気に認識される。まるで、ページごとにパシャパシャと写真を撮るように。
しかし、残念ながら、パッと見でページ全体を把握する写真式の速読術は、目や脳の仕組みからして、科学的に不可能であることがあきらかになっています。 私たちが文字をくっきり認識できる、視野の中心部分である中心窩は、自分の手を前に伸ばして「グッド!」と親指を立てたとき、実際に親指の幅ぐらいのごく小さな領域です。 その周りの傍中心窩やその周辺になると、字がどんどんぼやけていき、4度を超える周中心窩では主に明暗の判断しかできなくなってしまいます。
こうした目のメカニズムのため、目を動かさずに、パッと認識できる文字数は非常に少なく、通常の本の文字のサイズで、英語のアルファベットだと17~19文字ほどです。 つまり、パッと見だけで、1ページ全体に書いてある全ての文字を一気に認識して脳に焼き付けることは不可能なのです。人間の視覚のメカニズムの限界により、どう頑張ってもそんなことはできません。 ■目の動きを速くする意味は? また、目の動きを速くすることでも、速読は不可能です。実際に私たちの読書中の目の動きを分析してみると、一つ一つの言葉ごとに、目の動きがほんの少しだけ止まっていることがわかります。つまり、私たちの目は「凝視してから次に動く」を繰り返しているのです。