初めてのグローブタッチ拒否 “豆腐メンタル”中谷優我が明かした理由「あれは気持ちの表れ」
格闘界のレジェンドらと昭和を彷彿とさせるトレーニング
1回戦は完勝。準決勝前には自然いっぱいの千葉・九十九里にある“野獣”藤田和之の豪邸を訪れ、青木監督、“悪魔仮面”ケンドー・カシンの4人でトレーニング。最先端のMMAや技術の練習ではない。 雑草や木が無造作に生えるなかにある200段の階段でダッシュ10本。足がプルプルと震えて倒れそうになると藤田から「顔作んなくていいよ、行けオラ!」と叱咤激励が飛ぶ。カシンとはまき割りで背筋力と耐久力を鍛える。 そして最後は荒波押し寄せる九十九里浜へ。「張れ!」と藤田に追いつめられるが中谷はペチっと優しくビンタ。「こうやってやるんだよ」と重たいビンタを受ける。他の参戦選手とは違う泥臭い1か月を送ってきた。 「僕が15年間やってきた格闘技のなかで一番濃い時間でしたし、一番成長できる時間でした。僕に対してあんなに親身になって指導して怒ってくれる人ってあまりいないじゃないですか。僕の弱いところを伝えてくれて、一緒に成長しようって途中段階で……」 試合前のグローブタッチを拒否したのはこの日が初めて。いつもなら必ずするがこの日は違った。「今から“俺”が闘う相手。弱い自分を出さないというか、優しい心は排除して格闘技はやらなきゃいけない。たぶん、あれは気持ちの表れですよね。『やるぞ』っていう」。 瞳から大粒の涙が一粒、こぼれ落ちた。 「悔しいですよね……。結果で……青木さんに恩返ししたかったです」 厳しく指導した青木監督はチームを組んでいた期間に「(中谷に)嫌われたかもしれない」と漏らしていた。中谷本人にとっては感謝しかない。 「一緒にいて心強いし、愛を感じます。今まで怒られてきていないわけではないんですけど、性格の弱さを指摘してもらえたのは初めて」 今回の負けに「今後は分からない」とショックは隠せない。この4月から大学4年生、就職活動も始まっている。一生懸命やっても結果は必ずついてこない。一足先に社会の厳しさを学んだ中谷は『格闘代理戦争』で一皮むけたに違いない。
島田将斗