台湾加油! 全国各地で募金広がる 今回は日本が“恩返し”
3日発生の台湾東部沖地震で、日本国内に“恩返し”支援の輪が広がり始めた。東日本大震災や熊本地震の被災地など過去に台湾から多くの支援を受けた地域や姉妹都市の他、学校給食で台湾産バナナを提供する自治体が中心となり、「台湾加油(頑張って)!」と募金を呼びかける。能登半島地震の被災地でも、農家の間から台湾の人々に寄り添う声が聞かれた。 「台湾のことを思うと胸が痛む」。石川県輪島市の米農家、田上正男さん(79)が言った。能登半島地震では、台湾の人々がボランティアで駆け付けたり、民間から義援金25億円余りが贈られたりした。 田上さんは自宅や農業倉庫が損壊し、80アールの田はひび割れ、今年の田植えを「諦めざるを得ない」状況だ。それでも、地震直後を思い出しながら「台湾でも家族を亡くしたり、住む家が壊れたりと、つらいことばかりで混乱していると思う。だから、今は生きることだけ考えて、と伝えたい」と思いやる。 共に地震が多い日本と台湾は、大きな被害が起きるたびに相互支援を続けている。 きっかけは、2400人以上が死亡した1999年9月の台湾地震。日本は世界に先駆けて救助隊を派遣し、仮設住宅も寄贈。台湾は「恩返し」として、東日本大震災で世界最高額級とされた義援金200億円余りを贈った。 2016年4月の熊本地震で多くの義援金が寄せられた熊本県の被災地では、熊本市が5日、市役所や各区役所、熊本城などに募金箱を設置した。同市国際課の担当者は取材に「今でも多くの市民が台湾へのお礼の気持ちを持っている」と感謝の思いを代弁した。 東日本大震災の被災地、茨城県笠間市も募金を始めた。同市は18年から台北市に交流事務所を置き、観光客の誘致や交流を図る他、台湾産バナナを学校給食で提供する。福島県南相馬市も4日から市内4カ所に募金箱を設置した。同市では東日本大震災で台湾から支援を受けた他、現在も中学生が野球を通じて交流を続けている。 最大被災地の花蓮市の「姉妹都市」で、今回の地震でも30センチの津波を観測した沖縄県与那国町も募金を開始。同市と「友好都市」を結ぶ岩手県盛岡市も、義援金の募集を始める。 半導体受託製造の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)熊本工場が立地する熊本県菊陽町も5日、募金を始めた。3月に台湾で親善試合をしたプロ野球の読売巨人軍は4日、1000万円の寄付を発表。「さまざまな活動で得た収益金を支援に役立てる」考えだ。(糸井里未、栗田慎一、佐野太一)
<台湾での地震>
4月3日午前8時58分、台湾東部沖深さ23キロ付近で発生。マグニチュード7・7、最大震度6強。5日現在の死者は10人。台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレートがぶつかる位置にあり、日本と同様、群発地震が頻発する。
日本農業新聞