なぜ阪神は藤浪ら新型コロナ「陽性」を3人も出してしまったのか…露呈した危機管理の欠如
しかも、阪神は外出禁止令を出していなかった。球団によっては、外出禁止措置を厳格に打ち出しているチームもあったが、阪神の場合、あくまでも「不要不急の外出は自粛しなさい」に留まっていた。確かに専門家チームが作成した提言書では、「出来るだけ人ごみを避ける(人ごみに入る場合にはマスク着用)」とあり、外出禁止までの厳しい管理は求めていなかった。 外出禁止措置を取っていなかった阪神の危機管理体制は責められるべきではないが、感染リスクの高い“3つの密”が揃った場所への出入りを行わない意識の徹底については欠如していたと言わざるを得ない。1軍では注意深くチェックされていたのかもしれないが、それはファームにまで行き届いてはいなかった。 揚塩社長も、「もう少し厳しく外出禁止というふうな形で臨んでいた方が良かったかという反省もあります。結果的にこのようになりましたので、大変申し訳なく思っております」と“猛省“していたが、球団として危機管理体制の見直しは必要だろう。 もちろん「不要不急」でもないのに、結果として“3つの密”の場所に出入りした、この3人を含む7人の選手に認識の甘さがあったことも否定できない。 一方で、藤浪の勇気は、社会への大きな啓蒙になった。嗅覚に異常を感じた21日に、すぐにトレーナーに報告し、PCR検査を受ける段になって、「初期症状として、今まで情報になかった嗅覚、味覚の異常というものが起こることを多くのファン方、多くのみなさんに分かっていただく機会にもなるんじゃないか」と、実名公表を申し出た。
藤浪と合同トレーニングを行った経験もあるダルビッシュ有がツイッターで「嗅覚がおかしいってだけで名乗り出た藤浪選手はすごいと思う。 情報収集している証拠やし、自分の身体に敏感な証拠。 関係者の感染リスクもかなり抑えられたはず。 俺やったら1週間嗅覚バグってても気づかなそう」と絶賛した。 実際、Jリーグも藤浪の行動から「隠さない勇気」の重要性を再確認するなど、その勇気に早くも波及効果が生まれている。SNS上でも「嗅覚、味覚に兆候があらわれることは知らなかった。参考になった」という意見が多く見られた。 また藤浪の実名が最初にメディアに出たことで、藤浪が感染の“発生源“のように誤解されているが、現段階では、”発生源“も感染経路も判明していない。 阪神は、施設の消毒、球団事務所、クラブハウスの閉鎖、チーム関係者の1週間の自宅待機など、敏速に打てる手はすべて打った。現在「陽性」反応が出た3人の濃厚接触者の洗い出し作業が行われているが、今後、2次感染、3次感染と拡大、クラスター感染に発展する危険性は消えていない。首都圏で一斉に出された不要不急の外出自粛要請を受けて、西武、ロッテ、ヤクルトなど在京球団は、練習、練習試合を中止とし、選手、コーチらの自宅待機、活動停止を決定している。 なぜ阪神に陽性反応者が出たのか、という経緯と理由を正しく検証し、球界だけでなくスポーツ界全体で共有することが必要だろう。