「光る君へ」左衛門の内侍がまひろを敵視する理由 菅野莉央「目線は常にまひろへ」
実は「まひろの動向を常に目で追っている」という芝居は演出から指示されたものではなく、菅野自ら判断したこと。菅野はその意図を「まひろが何を言うかは気になるだろうなと思ったので、なんとなく意識や目線がまひろに向くようになりました。難しいんですけど、自分より位が上の方が他にいらっしゃったりすると、そちらにも神経を使わなければいけないので、あまりまひろへの敵意みたいなものに集中しすぎないように。仕事はきっちりこなしつつ、目の端でまひろのこともチェックしているぐらいの塩梅を心掛けています」と説明する。
なお、第33回ではリーダー格の宮の宣旨(小林きな子)がまひろに女房の日課を説明した際、まひろが「わたしもお手伝いしとう存じます」と口にし、それに対して左衛門の内侍が「お手伝い……」と絶句する描写があった。もともとまひろの藤壺での仕事は、帝(一条天皇/塩野瑛久)に献上する物語を執筆することがメインであり、それに加えて皆と同じ職務にも励むと言ったつもりだったが、真意が伝わらなかったようで、まひろが完全に浮いた存在になった。 「実は、リハーサルの時には結構言葉をつぶだててイラっとした感じが伝わるようにセリフを言っていたんですけれども、監督から“お手伝いっていう言葉を初めて聞いたような感じで”“ピンと来てないぐらいのトーンで”と指示があったので、そういう軽いニュアンスで言ったつもりなんですけど、実際に映像を観てみたら意外に怖くて(笑)。軽く言ったことでよけいに怖く見えた気がして、自分で見ていても面白かったですね(笑)」
左衛門の内侍のまひろへの敵意は回を追うごとにエスカレートし、まひろが彰子の背中を押したことで帝との距離が縮まり、悲願の懐妊がかなってからは、もはや彰子にはまひろしか目に入らない様子。まひろに座を奪われる格好となった左衛門の内侍は、第35回でまひろと左大臣・道長(柄本佑)が月を眺めながら親密そうにしているのを覗き見し、第36回では彰子とその母・倫子(黒木華)の女房である赤染衛門(凰稀かなめ)に二人がただならぬ関係にあることを密告。「悔しくはございませんの? あなた様は指南役の座を奪われ、私は中宮様のお傍に仕える務めを奪われたのでございますよ」と不満を漏らした。菅野は、本シーンを以下のように振り返る。 「まひろは身分が高い家の出身でもないにもかかわらずお部屋も大きいし、なんでこんなに特別待遇なのかって、ずっと疑問に思っていたところではあったと思うので、道長様と2人でいるのを見た時に“掴んでやったぞ”と(笑)。それみたことかっていう気持ちが湧いたんですけど、左衛門の賢いところは他の女房には言わずに、衛門様にだけ“左大臣様と藤式部はどういう間柄なんでございましょう?”と個人的に聞くところ。策士というか、もしかしたら衛門様も味方についてくれるかも、気づいてくれるかもしれないという思惑はあったんじゃないかと思います。結局、衛門様にはあしらわれてしまうんですけど、多分、宮中で“あの2人って……”と口にしたのは左衛門が最初で。それで衛門様もまひろに尋ねるような流れになっていって、まひろ自身が周りからそういう風に見られていることを意識するきっかけになると思うので、そういった意味でまひろに影響を与えた人物でもあるのかなと思っています」