子どもが不良になる「家庭環境」より大きなリスクとは?
少年の非行の原因としての家庭環境は、一般に考えられているほど大きくはなく、むしろ大きく影響しているものがあると言います。法政大学文学部心理学科の越智啓太教授の『眠れなくなるほど面白い 図解 犯罪心理学』(日本文芸社刊)より紹介します。 【この記事の画像を見る】 ● 「家庭環境に問題=非行に走りやすい」はウソ!? 少年の非行が取り上げられると、その家庭環境に目が向けられることが多くあります。たとえば、両親から暴力を受けて育つと、子どもは問題解決の手段として、相手を攻撃するのが一般的だと考えてしまうようになりがちです。 ただし、実証的な研究によると、非行の原因としての家庭環境は、一般に考えられているほど大きくはなく、むしろ友人関係の方が大きいという見解が多くなっています。
もちろん、家庭に問題があるため、子どもが家に居着かず、それが不良交友関係を形成するための原因になるということはあります。また、親子の関係が希薄だと、子どもがどこで誰と遊んでいるかわからず、非行グループと接触していることに気づきにくいこともあるでしょう。ただ、それはいずれも直接的な原因ではないため、家庭環境に問題があることで非行に走るというのは、短絡的な考えと言えるのです。 非行の原因としては、友人関係の影響のほか、本人のパーソナリティの問題も大きいものです。欲望や感情を抑えられない、欲求不満耐性が弱いといったセルフコントロールがとれないタイプが非行に走りやすいとされています。もちろん、実際に犯罪を犯したあと、少年を更生させるプロセスでは、家庭の存在が重要であることは間違いありません。 ● 不良グループに入ってしまうのはなぜ? 友人の影響で非行に走る人の事例は、サザランドによって提案された「分化的接触理論」である程度は説明できます。 私たちの行動のベースとなる価値観は、身近な他者からの学習によって作られます。そのため、学ぶ相手が法律を軽視し、反社会行動をとることがあると同じような行動をとるようになるのです。そして、同じような価値観の人といると安心感が生まれるため、不良グループに入ることになります。 ただし、この理論では不良とつき合っていても、非行少年にならない人がいるのはなぜかという疑問が生まれます。