濱田芳通&アントネッロがモンテヴェルディの『オルフェオ』を上演
現存する最古のオペラがペーリの『ダフネ』(1598)。次いでペーリとカッチーニ、それぞれの『エウリディーチェ』が初演され、オペラの歴史が始まった。こうしたオペラの誕生期に書かれながら、今も聴衆の心に響く傑作がモンテヴェルディの『オルフェオ』(1607)だ。2025年2月、この物語を日本古楽界を代表する指揮者、演奏家である濱田芳通とアントネッロが上演する。濱田とオルフェオ役の坂下忠弘、演出の中村敬一にその魅力を訊いた。 「この時代のオペラはアリアとレチタティーヴォの境目が無く、全編レチタール・カンタンド(歌うように語る)で構成されているのが特徴です。『オルフェオ』の魅力もそこにあります」。作品の聴きどころを濱田芳通はそのように語る。また『オルフェオ』の声の魅力について語るのが坂下忠弘。「私のバリトンは一般的なイメージよりもリリック(抒情的)な声質なので、オルフェオというキャラクターをきっと新鮮に感じていただけると思います。登場するすべての声が個性的で、ここに濱田さんの音楽のマジックがかかるとどんな舞台になるんだろうと楽しみにしています」。これまでも濱田の舞台で主要な役を歌ってきた"チーム濱田"の一員ならではの言葉だ。 オペラはもともとフィレンツェの貴族たちがギリシャ劇を再現しようとして生まれたものと言われている。そのエネルギーに現代にも通じる創造性を見るのが中村敬一だ。「キリスト教以前の、自分たちの喜びを表した芸術を創りたいと思ってやってみたらオペラができたということでしょうか。ただ古典を再現しようとして新しいものが生まれるというのは私たちのやり方にも似たところがあって、われわれ"チーム濱田"では濱田さんがモンテヴェルディの楽譜から徹底的に読み取ったものの上に想像力を重ねて舞台を創っていく。その結果『古典の上演を目指すんだけれども、出来上がった作品は未来志向』という面白さがあるんです」。それはアントネッロの古楽が常に新しいと言われる理由かも知れない。「アントネッロとしては3回目の『オルフェオ』です。私の中でレチタール・カンタンドに対する解釈が1回ごとに変化しており、今回は今までより、歌心とリズムに溢れた『オルフェオ』になると思います」。濱田はそう意欲を滲ませた。 <公演情報> 濱田芳通&アントネッロ モンテヴェルディ 音楽寓話劇『オルフェオ』 《兵庫公演》 バロック・オペラ・エボリューション2025/開館20周年記念 濱田芳通&アントネッロの「オルフェオ」 【日時】2025年2月15日(土)・16日(日) 【会場】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 《神奈川公演》 濱田芳通&アントネッロ モンテヴェルディ オペラ『オルフェオ』新制作 プロローグと全5幕 【日時】2025年2月22日(土)・23日(日) 【会場】神奈川県立音楽堂(木のホール)