【世界の野球10】選手がビールを飲んで解雇の危機?監督が見せた対処力
2012年当時の現地での試合のようす
【連載・色川冬馬の世界の野球~アメリカ編(10)~】 2015年から、野球のパキスタン代表監督を日本人の色川冬馬さん(26)が務めている。選手としてアメリカの独立リーグやプエルトリコ、メキシコのリーグでプレーし、その後代表監督としてイラン、パキスタンを指揮した色川さん。これまでの経験を通じて世界各地の野球文化や事情を紹介するとともに、日本野球のあるべき姿を探っていく。 《前回までのあらすじ》 大学4年で再びアメリカ独立リーグとの契約に挑戦し、2012年5月にみごとテキサス州リオグランデバレーにある「ホワイトウィングス」と契約することができた色川さん。中南米の選手が多い多国籍な環境の中で、唯一の日本人選手として、チームのムードメーカーになっていった。
子供用ベッドで眠る選手たち
チームに合流した当初、生活環境が約束されていなかった選手は、クラブハウスで生活していた。意外と何でもあるアメリカのクラブハウスでは、ベットがない以外、基本的に不便のない生活を送れるのだ。1週間くらいして、子供たちがサマーキャンプを行う施設をGMが確保し、私も含め選手たちの多くは、コテージ村のような環境で生活をしていた。 子供用に作られた2段ベットは非常に小さく、身体の大きな選手は寝返りさえ窮屈そうであり、ベットから足をはみ出しながら寝ていた。朝食は、そこの施設で出される朝食を食べ、昼と夜はスポンサーレストランなどのミールチケットをもらい食事をしに行く生活だった。
ふざけてビールを飲んだ選手が解雇の危機?
ある日、アメリカらしい体験をした。その日に渡されたミールチケットの店が定休日で、全員が球団オフィスで待っていた時、数人の選手がオフィスにあったビールを見つけ、ふざけて一気飲みして遊んでいた。 その日は何事もなく終わったのだが、翌日、真っ赤な顔をしてカンカンに怒ったGMが朝のミーティングに現れた。最初は監督と話をしていて分からなかったが、GMは昨日のビールのことに怒っているようだった。そして、GMは名指しで「あいつが飲んでいるのをみた」と怒鳴り始めたのだ。