〈同性婚の現実〉「男の子が男の子を好きになっちゃいけない」「あんたなんか産まなきゃよかった」夫夫(ふうふ)となった2人が乗り越えてきた困難と「この人のためなら」と思えた運命の出会い
「この人となら、辛いことも一緒に乗り切れる」
––––どういう流れで付き合うことになったんですか? ハヤトさん タカフミが看護師1年目だったころ、仕事でけっこう落ち込むことが多くて、ご飯も全然食べられていなかったんです。「昨日何食べたの?」って聞いたら「うまい棒3本」とか「お菓子で夕食済ましている」って言うので、「じゃあご飯作りに行くよ」ってなって。 押し掛け妻みたいな感じで、彼の家にご飯作りに行ったり、洗濯しに行ったりするようになったのがきっかけですね。 ––––結婚を意識し始めたのは、どのタイミングですか? ハヤトさん 彼の部屋に初めて行ったときに、足の踏み場がないほど汚くて、「よくこの状態で人を呼んだな」という感じだったんです。それで一心不乱に排水溝やお風呂を掃除したんですが、そのときに「この人のためなら、こういう汚い仕事もできる。それなら辛いことも一緒に乗り切れるんじゃないかな」と思い、結婚を意識するようになりました。 ––––2015年ごろは、世間のゲイに対する印象はどういう感じでしたか? ハヤトさん テレビ番組などの影響で、“ゲイやオネエは、おもしろい人やちょっと変わった人”みたいな印象があったので、職場とかでしゃべり方や身振りを馬鹿にされることがありました。でも2020年あたり以降、BLドラマなどが普及するようになってからは、そういうことはあまり言われなくなりましたね。 ––––当時、2人の結婚に対する周りの反応はどうでしたか? ハヤトさん 友達に結婚することを伝えると、「じゃあ海外に行くんだ」とか言われることもあって。その言葉を聞いたとき、「“男同士が結婚する”ということを、日本の一般の人たちは根本的に考えていないんだ」とすごく衝撃的でした。「自分たち、日本じゃまだ許されてないんだ」と感じましたね。
母から「あんたなんか産まなきゃよかった」と言われたことも
––––ご両親には、いつカミングアウトされたんですか? タカフミさん 僕は友達や姉にはカミングアウトしていたんですけど、両親だけにはずっと言っていなくて。両親にカミングアウトしたのは、結婚式を挙げたいってなったときですね。 ハヤトさん 僕は結婚したとしても、親にはそのことをずっと言えないだろうなと思っていました。なぜかというと、僕は幼少期から親に「そういう人は病気だ」って言われて育ってきたんです。 たとえば、親と一緒にトランスジェンダーのドキュメンタリー番組を観ていて、親が感動して泣いていたときにも、最後には「この人たちは病気だからね」「あなたは違うよね?」と言われてしまって。それで「この親には一生カミングアウトできないな」と思い、彼にもそのことは伝えていました。 でも、彼から「僕は家族や友人に囲まれて、祝われるような結婚式がしたい」って言われたんです。誰にも彼のことを紹介していなかったし、紹介するつもりもなかったので、そのときは「どうしよう」と思いましたね。 一生自分のことを隠して生きていくのか、親に勘当されたとしても彼と一緒に生きていくか、けっこう悩みました。でもやっぱり自分の人生を生きたいなと思い、カミングアウトすることを決意しました。 ––––カミングアウトしたときの親御さんの反応は? タカフミさん 僕は、2017年に“里帰り”をテーマとしたテレビ番組の密着取材を受けた際にカミングアウトしたんです。その番組の中で、母に「実は男の人が好きなんだよね」っていう話をしたところ、「やっぱりそうか」って言われました。 後日、母を通して父にも伝えてもらいました。父の反応は意外とあっさりで、「応援するよ」といった感じだったそうです。 ハヤトさん その番組が放送される前に自分もカミングアウトしなきゃと思い、僕も母親に伝えに行きました。実家に帰ってカミングアウトしたら、青ざめた顔ですごくドン引きされました。最終的に「あんたなんか産まなきゃよかった。親不幸者」って言われましたね。それでも、自分の人生を生きたいから、たとえ親に勘当されたとしてもタカフミと一緒に生きようと思っていました。 でも、後日そのテレビ番組を見た母親から電話がかかってきて、番組を見て感動したのか「お母さん、あなたたちのことを応援するから、これからがんばりな」って言われたんです。父親も「お前らが幸せならいいんじゃないか」という感じでした。 結婚式にはお互いの両親が参加してくれたのですが、そのときは感動して泣いていましたね。 ***************** 2人は2018年に家族や友人、職場の人たちに祝福されながら、結婚式を行なった。後編では、子どもを授かるに至った経緯や同性カップルならではの苦悩について聞いてみた。 (#2へ続く) 取材・文/集英社オンラインニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班
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