瀬川祐輔、丸山祐市らが伝えた熱。ACL上海海港戦で川崎が挙げた約1か月ぶりの勝利の意味
各選手の特長が活きる
[ACLエリート第4節]川崎 3-1 上海海港/11月5日/等々力陸上競技場 公式戦の勝利は10月5日のアウェー・33節の町田戦(○4-1)以来で、ホームでの勝利は9月27日の32節・新潟戦(○5-1)以来だ。 【動画】川崎×上海海港ハイライト その間に川崎は、ルヴァンカップの敗退、そして鬼木達監督の今季限りでの退任発表と、激動のような日々を過ごしてきた。だからこそ、久々の等々力での勝利にはどこか感慨深さを抱けるものであった。 相手の上海海港はリーグ優勝を決めてから中2日のゲーム。コンディション面、メンタル面でイレギュラーな状況であったのだろう。特に前半の出来は真の彼らの姿ではなかったはずだ。 もっとも、鬼木達監督が厳しい声をかけたと言うほどのホームでの完敗であった4日前の35節・鹿島戦から川崎は力強く切り替え、果敢に戦ったと言える。 相手の4-2-1-3に対し、スタートポジションは瀬川祐輔がトップ下のような位置を取る4-2-3-1で、守備時はFWエリソンと瀬川が最前線で並ぶ4-4-2の形に変化した川崎は、前からの守備で相手をはめ込み、リズムを作っていく。 12分には右CB佐々木旭からのロングフィードを受けた左SB三浦颯太がスピードを活かして縦に突破してクロスを送ると、DFのクリアボールを家長昭博が右足で決めて先制に成功。 1分後にはボランチ山本悠樹の縦パスを、攻め上がっていたもうひとりのボランチ橘田健人が相手ゴール前で受けてエリソンへ。エリソンのシュートをGKが弾いたところを瀬川が詰めて追加点。 そして33分には裏へ抜け出したエリソンの折り返しを瀬川がスルーし、その後ろに走り込んだ右SBファンウェルメスケルケン際が右足で豪快に決めた。 佐々木のフィード力、三浦の突破力、瀬川、橘田の機動力、エリソンの裏への抜け出しといった個々の特長を存分に活かし、3点のリードで前半を折り返した。 後半は10番のマティアス・バルガスらを投入してきた相手に押し返されるも、失点は82分にそのバルガスに決められた1点に抑え、勝利のホイッスルを聞いたのだ。 前述の通り約1か月ぶりの勝利、鬼木監督の今季限りでの退任発表後としては4試合目にして掴んだ初勝利だ。課題はまだ多く残るが、まずは一息つける勝点3と言えるだろう。ACLエリートの成績も4試合を終えて、2勝2敗の五分へと戻した。 そんな一戦は「試合前の雰囲気もスタメンだけでなくサブの選手も一緒に声をかけ合って、全体でいい雰囲気を作ってくれていたのが試合の入りにつながった」と佐々木が振り返ったように、チーム力を結集して結果につなげたゲームと言えるだろう。その分、ヒーローは数多い。 もっとも攻守でより光ったのは、先発起用に応えて前述のようにゴールを決めた瀬川、そしてキャプテンマークを巻いて最終ラインを統率した丸山祐市と言えるのではないか。 前半はベンチで戦況を見守り、途中出場した後半にはポスト直撃のシュートを放ったFW小林悠も瀬川の奮闘を称える。 「瀬川が前から素晴らしい守備、チェックをしてくれていたので、後ろも狙いやすかったはずですし、後ろも強気に出られたはず。今日は前線からの守備が本当に良かったと思います。 瀬川が努力してきたのを見てきたので嬉しいですし、ゴールも決めましたからね。前半からみんなでハードワークして先制点を取れば強いと思うので、アグレッシブな姿勢を続けていきたいです」 対して試合後にはサポーターの前のお立ち台にも登り、祝福された丸山は謙遜しながら述懐する。丸山の指示、叱咤激励の声は記者席にも聞こえるほど、響いていた。 「良い状況の時は特にやることがないと言いますか、苦しい状況の時にいかに振る舞うかを意識していました。 (声は)自分の持ち味 と言えばそうですし、チームとしてここ最近、前半の早い時間に点を取られることが多かったので、チーム全体としてなくそうではないですが、逆に点を取って有利に運ぼうと話していたので、そういった部分では、相手のコンディションも確認して畳みかけながら、しっかり取れて良かったと思ういます」 そして鹿島戦からの切り替えについても語ってくれた。 「鹿島戦に出なかったメンバーが今日何人かスタメンで出ていましたが、そういった部分で試されている面もあったと思いますし、闘うぞと。誰もが100パーセントの気持ちでやっているのは分かりますが、逆に鹿島の時にみたいに弱気なところだったり、隙は見せていないのですが、相手が戦ってきているところで逃げてはないですが、少し屈してしまうようなところも僕的にはそう見えた部分があったので、そこをもう一度、今日の試合でできたらなと思っていました」 丸山は「キャラじゃないんで、僕は目立たずに。全員で盛り上げていければ」と笑みを浮かべるが、試合前には鬼木監督から、各選手の持ち味を活かしながら「変に失わないようにしながら、つなぐところはつなごう」と指示を受け、それを実践した形とも言えるだろう。 この一勝ですべてが変わるわけではなく、今回は上海海港の状況も加味しなくてはいけない。それでも鹿島戦から引き締め直し、勝点3につなげられた成功体験は今後につながるはず。 今季は手応えのある試合と不甲斐ない試合を繰り返すなど波の激しいシーズンを過ごしているだけに、上海海港戦での勢いを持続させたいところである。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)