「マイナンバーカードには有効期限がある」トラブル続きのマイナ保険証を政府が国民に押し付ける本当の狙い
■あと1年で利用率が100%になるとは考えられない しかし、健康保険証を「人質に取る」やり方でのマイナカード普及促進は問題が大きいだろう。現在、有料老人ホームなど介護施設では、施設が健康保険証を預かり、医師の往診時や病院通院時などに使っているケースが多い。そうした介護老人の中には認知能力の低下などで、自分自身でマイナンバーカードを申請することも管理することもできない人が少なからず存在する。保険証が廃止されたらマイナンバーカードを預かります、という施設はほぼないと見られる。健康保険証だけでなく、さまざまな情報が紐付けられているため、本人に代わって施設が預かるリスクが、現行の健康保険証に比べて格段に大きいからだ。 こうした問題を解決するために、「資格確認書」が交付されることになっていて、マイナ保険証でなくても保険診療が引き続き受けられることになった。実質的には保険証の廃止は先送りされているとも言えるのだ。つまり、あと1年の間にマイナ保険証の利用率が100%になり、現行の保険証や資格確認書が不要になることはないだろう。保険証を廃止することで、マイナンバーカードを普及させるという政府の魂胆は不発に終わるに違いない。 ---------- 磯山 友幸(いそやま・ともゆき) 経済ジャーナリスト 千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。 ----------
経済ジャーナリスト 磯山 友幸