「マイナンバーカードには有効期限がある」トラブル続きのマイナ保険証を政府が国民に押し付ける本当の狙い
■国会議員の多くが疑問を抱く「一本化」 政府はマイナ保険証の利用促進に躍起になっているが、野党をはじめ国会議員の多くが強引ともいえる「一本化」に疑問を感じている。昨年9月末の自民党総裁選には9人が立候補したが、岸田文雄政権で既に決まっている「マイナ保険証一本化」についても異論が出た。岸田内閣の官房長官を務めてきた林芳正氏が「不安の声があるので、それを払拭して、皆さん納得の上でスムーズに移行してもらうための必要な検討をしたい」と移行時期の見直しに言及。かつて総務大臣としてマイナンバーカード普及の先頭に立った経験を持つ高市早苗氏も「しっかりとマイナ保険証が使える環境が整備されてからというのが、一番皆様のためになると思う」と発言していた。 総裁に選ばれた石破茂首相も、総裁選の時には「納得していない人、困っている人がいっぱいいる状況があったとすれば、(従来の保険証との)併用も考えるのは選択肢として当然だ」と発言していた。もっとも石破氏は首相になると、「現行の健康保険証の新規発行終了につきましては、法に定められたスケジュールにより進めていきます」と発言、見直し姿勢は封印している。 ■なぜ現行の保険証を廃止することになったのか しかし、なぜ、現行の保険証を廃止することになったのだろうか。東京新聞は検証記事でこう指摘している。 「いつ、どんな議論を経て、誰が決めたのか。現行の健康保険証の廃止がどのようにして決まったのか、その経緯が分かる記録を政府は残していなかった。決定に至るまでの手続きも異例で唐突だった。国民が納得するだけの説明もない」 おそらく政府は、なかなか進まないマイナンバーカードの普及を一気に進める切り札になると考えたのだろう。当初はマイナンバーカードがあればコンビニの端末で住民票が発行できますといった利便性を強調することで普及を目指したが、国民の反応は鈍かった。 次に政府は「アメ」としてポイントを与える手を考えた。民間のクレジットカードなどがポイントを付与するのは、利用によって将来の収益を得られるから。政府が国民に利益供与して普及させるという不可思議な政策を始めたのだ。第1弾、第2弾併せて最大2万円分がもらえるようにした結果、2019年4月に普及率がわずか13%だったものが、2023年12月には普及率は73%に達した。この間、投じられた国費は2兆円。それでようやく国民の4人に3人がカードを持つに至った。