BMW第2の「ノイエ・クラッセ」は電気自動車で! 始祖となる「1500」の大ヒットに「ノイエ・クラッセX」はあやかることができるか!?
ホフマイスターキンクの開祖
1500では開発段階から「ノイエ・クラッセ」をキーワードとし、確たる姿勢をうかがわせた。これは、従来同じカテゴリーで製作されたいかなるサルーンと比較しても、走行性能や操縦性、快適性、さらには安全性に至るまで遥かに上回っているため、もはや新しいクラス別けが必要との姿勢をアピールしたキャッチコピーだった。 しかも、彼らの自信に満ち溢れたコミットメントは、1960年代初頭の自動車業界の技術レベルにおいては、すべて真実と認めざるを得ないものであった。 ノーズを低めるとともに整備性の向上のため30度左傾された新設計の水冷直列4気筒エンジンは、軽合金製SOHCヘッドで燃焼効率の高いクロスフローを実現。ベースモデルの低いチューンでも80psの最高出力を達成していた。 くわえて、この高性能エンジンをフロントに左傾して搭載、リアを駆動するというレイアウト。あるいは前:マクファーソン・ストラット/後:セミ・トレーリングアームの4輪独立サスペンション。高剛性のモノコックボディなどの基幹技術は、21世紀を迎えた現代のクルマとしても、なんらの言い訳も無く通用するもの。さらには、今なおBMW各モデルのCピラーに設けられているデザインアイコン「ホフマイスターキンク」も、開祖は1500だった。 こうして1962年10月からデリバリーが開始された元祖ノイエ・クラッセは、BMWの期待に応えて同社始まって以来の大ヒットとなったのだ。
BEVに新しいクラスをもたらす? 新生ノイエ・クラッセとは?
元祖「ノイエ・クラッセ」が、1960年代の自動車業界に「新しいクラス」を提唱しようとしていたのに対して、さる2023年にBMWお膝元のミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2023」において初公開された新生「ヴィジョン・ノイエ・クラッセ(Vision Neue Klasse)」は、これまで1~8シリーズで構成されてきたBMWのカテゴライズから離れ、電動化を前提とした「新しいクラス」を提唱しているかのように映る。 必要なもの以外はすべて削ぎ落としたシンプルな面構成、あるいはスリークなラインにより「クリア、エレガント、タイムレス」を目指したというヴィジョン・ノイエ・クラッセのボディスタイルは、先日逝去した故マルチェッロ・ガンディーニ「博士」がデザインし、1970年のジュネーヴ・ショーにてベルトーネ名義でショーデビューした「ベルトーネ・ガルミッシュ(Bertone Garmisch)」コンセプトカーを意識したかに思われる。 ただ、のちのE12系初代5シリーズのたたき台になったことでも知られるガルミッシュについて、BMWのデザインディレクターであるドマゴイ・デュケック氏は「ヴィジョン・ノイエ・クラッセ」のデザインワークにあたり、1980年代に大ヒットしたE30系2代目3シリーズE30型に影響を受けたと語っているという。 その真偽はさておき、ヴィジョン・ノイエ・クラッセの発表に際しては、メカニズムやスペックに関する詳報もリリースされていなかった。しかし、効率性に優れた最新世代の電動ドライブトレインや、エネルギー密度を20%以上も高めた新開発のバッテリー・セルなどの先進技術を搭載するとのこと。その結果、充電速度が従来のBMW製BEVよりも最大30%速くなり、航続距離も最大で30%延長されたとアピールされているようだ。