JR九州高速船「クイーンビートル」亀裂は船首右舷の「スロット溶接」跡に集中…抜本的な補強対策へ
再開時期は明示できず
JR九州の完全子会社「JR九州高速船」(福岡市)が、博多港―韓国・釜山港を結ぶ旅客船「クイーンビートル」(定員502人)の浸水を隠して3か月以上運航を続けていた問題で、JR九州の古宮洋二社長は26日の記者会見で、浸水を生じさせる亀裂がこれまでに繰り返し発生してきたクイーンビートルの船体について、抜本的な補強対策を行うことを明らかにした。将来的には運航再開を目指す考えも改めて示したが、補強のハード対策の完了やJR九州高速船の社員全員の安全意識の醸成などを前提条件としており、再開時期は明示できなかった。 【イラスト】浸水が悪化した5月末のクイーンビートルの状況
クイーンビートルは豪州造船大手「オースタル」が建造したアルミ合金製。会見に同席したJR九州高速船の大羽健司社長は、これまでに発生した船体の亀裂は全て船首の右舷に集中していることを明らかにした。右舷と左舷の外板は溶接方法が異なり、右舷外板は複数の穴で外側から溶接する「スロット溶接」という手法が取られていた。
しかし、亀裂は全て溶接の跡から生じており、JR九州は溶接方法に問題があったと判断。オースタルから右舷外板を取り寄せた上で、新たに「連続溶接」の手法に切り替えて接合強度の向上を図るとした。アルミ合金の溶接技術の専門家確保を進めているとしたが、ハード対策の完了には相当の時間がかかるとみている。
また、波高や風向きに応じた運航方法、運航ダイヤの見直しも行うとした。