敵情視察に必殺パンチ隠した王者の木村翔が大晦日に願う脱ボンビー生活
WBO世界フライ級王者、木村翔(29、青木)は大晦日に元WBC世界王者で同級1位の五十嵐俊幸(33、帝拳)と初防衛戦を行うが、18日、先立って都内の青木ジムで木村の公開練習が行われた。木村は12ラウンドのミット打ちというロングランの練習を披露したが、帝拳の浜田剛史代表が視察に訪れていたため、対五十嵐用のパンチを見せない煙幕を張った。日本人対決らしい緊張感が漂うが、現在、家賃5万、1K、5畳一間のアパート暮らしで、酒屋のバイトも続けている木村は、「勝って10畳10万の新居に引っ越したいし仕事もやめてボクシングに集中したい」と“ボンビー生活脱却”を願った。
公開練習のミット打ちを始める前に有吉会長が木村に耳打ちした。 「見せるな」 確かにそう聞こえた。 報道陣の後ろには帝拳の浜田代表の姿があった。 「対左用の必殺パンチを見せるなと。それは出しませんでした。まあ、練習を見られても自分のボクシングをやるだけなんですけどね」 木村も対左用の必殺パンチを隠した……と言った。 ミット打ちは試合想定の12ラウンド続いたため、浜田代表は途中で帰ったが、日本人対決、指名試合ゆえのピリピリした“前哨戦”が早くもスタートしている。 木村は、11月12日から19日までは香港、11月24日から12月8日まではタイで合宿を行い、タイでは1ラウンド4分のスパーを2週間で計78ラウンド。計300ラウンドに渡って徹底したのが苦手のサウスポー対策だ。 「むずかしかったのは距離感。最初は中に入れなかったが慣れた。タイでも左対策を教えてもらったし、クリンチも教えてもらった。ほどき際でも打つ。そこが大事」 サウスポーの五十嵐の懐にどう入るかが、ポイントである。 有吉会長にディフェンスから、その手順を教えられたが、頭で理解していても、不安と恐怖感がなかなかぬぐえなかった。プロデビュー戦がサウスポーの王子翔介でおまけに2度ダウンして1回KO負けを喫している。 4年前から。こびりついた“トラウマ”は反復練習で克服した。 「もう苦手意識はない。体が覚えてくれた」 その裏づけとなるのが無尽蔵のスタミナ。 「スタミナとスピードは五十嵐に負けていない。テクニックは負けるかもしれないが、上まわれる。スタミナがあれば、思い切って出したいことが出せる。1ラウンドから12ラウンドまで強いパンチを打つのが僕のスタイル。終盤にいい形でKOに持っていければ」 描くのは終盤のKO決着である。 五十嵐は目にカットしやすい古傷がある。パンチで切ればいいが、偶然のバッティングで切った場合は、試合ストップイコールTKO勝利にはならない。 そこは勝敗につながるポイントのひとつだが、「気にせず序盤から積極的に前へ出る」と言う。