増加する“皇居ランナー” トラブル減少目指す千代田区の対策とは?
皇居の生態系に配慮 夜間ランナー接触対策にはフットライト設置
そうした対策を施す千代田区の頭を悩ませたのが、仕事終わりに皇居周辺を走るランナーです。夜間は視界が悪くなるため、昼間と同じスピードで走っていても歩行者に気づきにくく、接触トラブルが起きやすいのです。 「街路灯を多数設置すれば夜間でも歩道は明るくなるので、危険度は低減します。しかし、皇居には豊かな自然があり、多様な生物が生息しています。街路灯を多数設置してしまうと、夜間でも明るくなってしまいます。そうした環境の変化によって生態系が崩れてしまう恐れがあります。そうした立地上の特性から、皇居周辺は街路灯の設置が難しいのです。しかし、皇居ランナー対策を放置するわけにはいきません。街路灯の替わりに、皇居の自然に影響を与えないようなフットライトを設置して、明るさを確保しています」(同)。 そのほかにも皇居ランナーを巡る問題はあります。近年、皇居周辺では週末などにランニングイベントが頻繁に開催されるようになっています。ランニングイベントはタイムを競うことになるので、多くのランナーが走り、ランナーのスピードも速くなります。猛スピードのランナー集団が皇居周辺を走れば、当然ながら歩行者への危険度は増します。 そうしたことから、千代田区は土日祝日開催で参加者が20人以上のランニングイベントについて、“集合場所・スタート地点・ゴール地点は桜田門前広場とすること”、“定められた10か所に交通整理員を配置すること”、といったランニングイベントの開催ルールを2013(平成25)年に制定したのです。 皇居ランナーに対して、千代田区が取り組んでいるのはマナーやルールといったソフト面だけではありません。ランナー・歩行者が転倒するリスクを軽減するため草刈り作業や植え込みの根上がり部分を除去するなどしています。 今後も皇居ランナーは増えることが予測されています。皇居ランナーが増えれば、それに比例してトラブルも増えるでしょう。ソフト・ハード両面にわたる対策によって、千代田区は皇居ランナーと歩行者の共存共栄を目指しているのです。 小川裕夫=フリーランスライター