増加する“皇居ランナー” トラブル減少目指す千代田区の対策とは?
今年のリオデジャネイロ五輪は日本人選手の活躍も目覚ましく、それらに刺激されてスポーツを始めてみようと思い立った人も多いのではないでしょうか? いざ何かしらスポーツを始めようと思い立っても、一人でできるスポーツは限られています。 ランニング・ジョギングは専門的な道具を必要とせず、また一人で始められるという手軽さから競技人口は増加傾向で、また本格的ではなくても、趣味として楽しもうとするランナーも増えています。特に健康志向の高まりもあり、早朝や退勤後に汗を流す人が多くいます。東京都の中心にある皇居でも、ジョギングする“皇居ランナー”をたくさん見かけるようになりました。 他方で、皇居は観光地としても人気スポットで、特に桜のシーズンには国内のみならず、東京のみならず遠方からも多くの花見客が訪れます。また、最近は海外から皇居を訪れる観光客も珍しくありません。皇居周辺は、人の往来が激しくなっているのです。
休日には8300人が走る皇居ランナー マナー策定し、銭湯などで啓発
そうした状況下、増える皇居ランナーによるトラブルも頻発するようになりました。東京都千代田区は街の魅力を向上させるべく、2013(平成25)年に皇居周辺地域委員会を立ち上げました。同委員会は、主に道路をはじめとする公共空間で、皇居ランナーと一般歩行者・観光客などが共存できるマナーやルールづくりを検討しています。皇居一帯は千代田区になりますが、だからといって個人の趣味であるランニングやジョギングに行政が口を出すのは、なぜでしょうか? 環境まちづくり部景観・都市計画課の担当者はこう話します。 「千代田区では、2008(平成20)年に秋葉原の歩行者天国で7人が死亡、10人が負傷する通り魔事件が起きました。同事件の影響で一時的に歩行者天国が中止されています。しかし、2011(平成23)年に歩行者天国は再開されます。それをきっかけに、同区では公共空間の活用についても検討されることになったのです。そうした流れの中で、皇居ランナーのマナーの悪さを指摘する声が多かったこともあり、検討委員会で皇居ランナーのマナーやルールを策定することになったのです」。 皇居ランナーが問題視されるようになった2012(平成24)年度の千代田区の調査によると、平日の18時~21時に約4000人、休日の7~18時には約8300人の皇居ランナーが汗を流しています。皇居周辺は1周約5キロメートルですが、その中には国道・都道・区道が混在し、特に代官町通りと呼ばれる区道では接触トラブルが多発していました。代官町通りは区道だったことから、ほかの区間と比べて道幅が狭く、歩道もそれに比例して狭くなっていたのです。 「委員会は調査結果を元に、少しでもトラブルを減らすために皇居ランナーが守るべくマナーの策定に着手しました。策定されたマナーは、“歩道は歩行者優先”、“歩道をふさがない”、“周回は反時計回り”、“タイムよりゆとり”など、9つあります。マナーの啓発を図るため、皇居ランナーが着替えやランニング後に汗を流すために立ち寄る皇居周辺のスポーツジムや銭湯などにチラシを配ったり、ポスターを貼ったりしています。その結果、区に寄せられる苦情は大幅に減ったのです」(同)。