沖縄・栄町の老舗弁当屋 70年の歴史に幕 名物のポーク卵は新店舗が引き継ぎ
沖縄県那覇市安里の栄町市場にある総菜・弁当屋「かのう家」を両親の代から70年以上営んできた嘉納毅さん(75)、ケイ子さん(74)夫妻が2月29日、最後の営業を終えた。体力的な問題と長引く物価高で閉店を決めた。賄い食から始まったポーク卵おにぎり、正月や旧盆に欠かせない重箱料理、名物にもなったジーマーミ豆腐。郷土の味を名残惜しむ人たちがひっきりなしに店を訪ね、夫妻をねぎらった。(社会部・城間陽介) 【写真】かつお節香る市場に 八百屋の3代目が支援募る 「昼の市場のにぎわい取り戻す」 沖縄・那覇市 「かのう家」は栄町市場ができて間もない1950年前後に「古着屋」からスタートした。創業は毅さんの父・宗孝さんと母・八重さん。米国から輸入した古着を販売していたが、しばらくして八重さんが食堂を始めた。 商売の幅はそれから広がり、総菜販売、焼き鳥や天ぷら、チキンの丸焼きの他、正月や旧盆シーズンには重箱の注文を受け付けた。「多い日で1日100箱売った。16時間立ちっぱなしで働いた」と、日本復帰の72年ごろから親を手伝った毅さん。やがてケイ子さんも加わった。 時代は変わり、大型スーパーが近隣に進出すると、重箱料理などの売れ行きに陰りが差す。それでも、賄い食から生まれた「ポーク卵おにぎり」が好評で、少年野球チームが100個単位で注文するなど看板メニューの一つになった。 さらに沖縄ブームに乗って2005年には大手航空会社の機内誌に特製「ジーマーミ豆腐」が紹介され、観光客に爆発的に売れた。 海外客のリピーターも増えたが、物価高騰にあらがえず、年齢的にも潮時だと判断した。今後、店舗はミャンマー出身の松田メイさん(43)が借り上げ、ミャンマー料理店を出店するという。メイさんは「ジーマーミ豆腐、ポーク卵は引き継ぎたい。同じ場所でできるのは楽しみ」と笑顔を見せる。 栄町市場で親が営む「安座間精肉店」を手伝う安座間若菜さん(40)は「かのう家のポーク卵、コロッケ、天ぷらが大好きだった。今度は私たちが市場を元気にしていきたい」と話した。