「路面電車」が復活の動き その背景は?
現在、中央区の銀座や豊島区の池袋などで、路面電車を復活させようという動きがあります。かつて東京中を走っていた都電は、時代遅れの烙印を押されて姿を消しました。栃木県宇都宮市でも路面電車の復活を公約に掲げた市長が再選しています。 路面電車を復活させようとするのはなぜか? その背景を探りました。
富山市での復活が契機に
2003年、JR西日本は不採算路線である富山港線を富山市に譲渡することを発表しました。富山港線は富山駅から岩瀬浜駅までの約8キロの短い路線です。 富山港線の1日の利用者は平日平均で2000人程度、昼間帯は一時間に1本ほどしか列車が運行されていない状況でした。そんなローカル線を富山市は路面電車に転換しました。路面電車化にあたり、富山市は線路を付け替え停留所も増やしています。 路面電車は昭和30年代まで、日本各地で走っていました。仙台・新潟・横浜・名古屋・神戸・福岡といった大都市には必ず路面電車が走っていましたが、これらはすべて廃止されました。辛うじて残った東京・大阪・京都でもわずかな距離しかありません。路面電車が廃止されたのは、日本経済が高度成長する中で自動車は一気に普及したことです。道路に自動車が溢れると、「路面電車は道路の邪魔者」と排除されたのです。
各地で復活や延伸の動き
富山市で復活したことを契機に各地でも路面電車を見直す兆しが出てきています。現在、路面電車の復活にもっとも意欲的なのが栃木県宇都宮市です。2004年に初当選した佐藤栄一市長は、3選出馬の公約に“路面電車の復活”を掲げました。その佐藤市長が2012年に再選したことで、宇都宮市の路面電車計画は大きく進み始めました。 既存の路面電車を延伸させようという動きも活発化しています。札幌市では市電を延伸させて、環状線化することが昨年に決まりました。2015年春の完成に向けて工事が進められています。ほかにも、路面電車の新設や延伸を検討している自治体には、静岡県静岡市・大阪府堺市・島根県松江市をはじめ10都市以上あるといわれています。