【函館スプリントS回顧】函館1200mはロードカナロア産駒に逆らえない サトノレーヴが秋へ飛躍の重賞初制覇
舞台を選ばないウイングレイテスト
レースはアサカラキングがスタートダッシュで見劣り、ハナに行けなかった。カイザーメランジェにスタートを決められ、後手に回ったのは痛かった。逃げ馬と好位に控える競馬は似た位置取りであっても違う。発馬直後に行かない選択をしたのが裏目に出たか。いつもほどの圧倒的なパフォーマンスを見せられなかった。もう少しわがままに乗ってもよさそうだが、今回は状況を判断して、あえてカイザーメランジェを行かせたか。 9着と着順を落としており、試みは結果を出せなかったが、長い目で見れば、控える経験も幅を広げるためには必要でもある。いずれは試さなければならない試練であったことは事実であり、今後はこの結果を受けて、陣営がどんな作戦を選ぶのか楽しみだ。個人的には控えても味がありそうなタイプではなく、見せ場すらなかった今回を踏まえるなら、行かせた方がよさそうだ。 カイザーメランジェが演出した流れは前後半600m33.4-35.0。ハイペースではあったが、サトノレーヴ、2着ウイングレイテストら好位勢が踏ん張り、後半は11.7-11.6-11.7と失速することはなく、ゴールまで同じペースで粘られては後続はどうしようもない。それだけに上位馬のスタミナと持続力には注意が必要だ。 2着ウイングレイテストは初のスプリント戦出走で素質の高さをアピールした。スワンSを勝った1400m巧者だが、これで距離選択の幅が広がった。1400mよりハナに行ってくれるスピード型がいる1200mの方が競馬を組み立てやすく、まだまだ力を発揮できる。母の父サクラユタカオーの成長力とスピードの持続力が7歳でも活躍する源のひとつ。舞台を選ばない器用さもあり、まだまだやれる。 3着ビッグシーザーは先行勢の後ろで流れに乗り、絶好の形を作れはしたが、前が止まらなかった。前が失速ラップを描くようなレースを差し込むのが得意パターンであり、今回は強力な先行型に屈した。ベストは平坦ではなく坂がある1200m戦であり、ハイペースが定番の中山は合う。ただ、好位勢の後ろから競馬をすれば外を回らざるを得ず、その辺がなんとも歯がゆい。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳