【密着】ドイツ 廃墟の美しさに魅了され、写真家として生きる息子へ届ける両親の想い
ドイツで写真家として奮闘する山田悠人さん(40)へ、東京都で暮らす父・敏郎さん(70)、母・すみえさん(70)が届けたおもいとは―。
他の写真家にはない独自のセンスと技術で美しい廃墟を撮影
廃墟写真で名が知られる悠人さん。そのきっかけとなったのが、6年前に日本で出版した写真集「SILENT WORLD-消えゆく世界の美しい廃墟-」。ヨーロッパの廃墟を3年かけて撮り続けた写真は評判を呼び、今では版を重ねて世界中で販売されている。 そんな悠人さんが次の個展に向けて撮影にやってきたのは、かつての東ベルリンに残る廃墟。ソ連軍の兵士と家族が使用していた住居や劇場、プールなどの痕跡が生々しく残る戦争遺跡をデジタルカメラに収めていく。撮影した画像はデジタル加工して、イメージ通りの作品に仕上げる。実はこの加工こそが、悠人さんの強み。元々グラフィックデザイナーだった悠人さんは、他の写真家にはない構図を作る独自のセンスと、グラフィックデザインで培った優れた加工技術が高く評価されているのだ。 写真家としてのキャリアはまだ10年。廃墟写真で知られるようになるまで収入はほとんど無かったというが、最近では展示会を開けば作品が完売するように。自動車メーカーやスポーツブランドなど世界的な企業から商業写真の依頼も増えてきたという。
移住したドイツの自然の美しさに魅了され、突然写真家に転身
家族は妻のコネリアさん(39)と2人の子ども。10日後には3人目が生まれる予定だ。 幼い頃から絵を描くのが好きだった悠人さんは、グラフィックデザインの道に進んだ。そしてより深くデザインを学ぶため、米ニューヨークに留学した時にコネリアさんと出会った。2010年、2人は日本で結婚するが、翌年に東日本大震災が発生。これを機にコネリアさんの実家があるベルリンの郊外へ移住した。そこで魅了されたのが、ドイツの自然の美しさ。家の隣にある湖に沈む夕日、森を散歩すると出会う動物たち…そんな光景を家族や友人とシェアしたいとの想いが湧き、30歳にしてグラフィックデザイナーから写真家に転身したのだった。当時、デザイナーとしての収入は十分あったにもかかわらず、突然の転職。それでも応援し続け、家族を支えるコネリアさんに悠人さんも感謝する。