アルピーヌのルーキー、ジャック・ドゥーハンは何者? 執念でF1にたどり着いた”最速の遺伝子”
アルピーヌは2025年のドライバーとして、ジャック・ドゥーハンをピエール・ガスリーのチームメイトに選んだ。 F1 2025年ドライバーラインアップ|グリッドに並ぶ20名は誰? FIA F3やFIA F2をチェックしていたファンにはおなじみかもしれないが、改めて彼がどんなドライバーなのかおさらいしてみよう。 ■ジャック・ドゥーハンとは? ドゥーハンはオーストラリア・クイーンズランド州ゴールドコースト出身のレーシングドライバー。その父親は二輪のロードレース世界選手権500ccクラスで5年連続チャンピオンに輝いた伝説的なライダーであるミック・ドゥーハン。まさにレース界のサラブレッドだが、父とは違い4輪レースの道に進んだ。 ドゥーハンは15歳でイギリスF4に参戦すると、シーズン3勝をマークし総合5位となる。この当時、ドゥーハンはレッドブルのジュニアドライバーであり、ドイツ・イタリアのF4へスポット参戦し腕を磨いた。 2019年はF3アジア選手権にハイテックから参戦。この時のチームメイトは笹原右京だったが、ドゥーハンは敗れてランキング2位となっている。 2020年はFIA F3選手権にステップアップするが、HWAのチームメイトであるジェイク・ヒューズやエンツォ・フィッティパルディから大きく後れを取ってしまい、ノーポイントでシーズンを終えた。 しかしトライデントからの参戦となったF3での2年目は開幕戦のレース3で2位表彰台。勢いを取り戻したが、最終的にランキング2位とまたもタイトルには届かなかった。 ここで彼のキャリアに転機が訪れる。ドゥーハンはレッドブル・ジュニアとの契約を延長するオプションを持っていたようだが、結果的にそれを行使せず。アルピーヌ・アカデミーへの移籍を選んだのだ。この決断が、彼のF1参戦を大きく手繰り寄せる事となったと言える。 2022年からはFIA F2に参戦。初年度から3勝をマークすると、翌2023年には同じく3勝ながらランキング3位となり、F1参戦に必要なスーパーライセンスの発給条件を満たした。 2024年に向けては、インディカーやスーパーフォーミュラ、WECのハイパーカーに乗るオファーもあったというが、あくまでアルピーヌF1でのテストプログラムに注力。F1挑戦に向けて最善の態勢を築いていた。 アルピーヌはモナコGPでチーム内の規律を乱したエステバン・オコンと袂を分かつことを決めたが、そこで後任に浮上したのがドゥーハンだった。6月にオコンの離脱が発表されたが、当時はフェラーリのシートを失ったカルロス・サインツJr.がドライバー市場にいたため、ドゥーハンの起用が決まったのは8月下旬。実にもどかしい日々を過ごしたことだろう。 さらにアルピーヌは、2024年シーズン中にドゥーハンにチャンスを与えることにした。最終戦アブダビGPでオコンを降ろし、ドゥーハンをひと足早くF1デビューさせたのだ。 レギュレーションを紙にプリントし”お勉強”しながらアブダビに臨んだドゥーハンは予選で17番手。決勝は15位で完走を果たしている。 ドゥーハンはこれまでアルピーヌから数多くのテスト機会を与えられており、ルーキーの中でもF1での走行経験は随一だ。 ■ライコネンは憧れの存在。カーナンバー7を受け継ぐ ドゥーハンが使用するカーナンバーは7番。かつてキミ・ライコネンが使用していたナンバーだ。 この番号を選んだ理由を、ドゥーハンは次のように説明した。 「これに決まりだ。2025年の僕のレースナンバーは7になる」 「凄くワクワクしているよ」 「以前レースで使っていたこの番号で行きたいと思っていたんだ。僕にとっては意味のあることだ。2019年に7番で走っていた」 「そして僕のアイドルのひとりで、とても特別な人物であるキミ・ライコネンも、この番号を使っていたんだ」 「それを僕が引き継げるのが本当に楽しみだ。そしてもちろん、7番から幸運をいくらか貰えればいいね」 ドゥーハンも言及しているが、彼は2019年にユーロフォーミュラ・オープンに参戦していた際に7番を使用していた。 ■スカイラインGT-R(R34)はドリームカー! ドゥーハンのSNSを見ていると、ある日本の市販車が度々登場する。彼にとってのドリームカーが日産のスカイラインGT-R(R34型)。1998年から2002年まで販売されたスカイラインGT-Rの10世代目だ。 映画Fast and Furious(邦題:ワイルドスピード)シリーズで、主人公ブライアン・オコナーが駆るR34 GT-Rを目にし、虜になったドゥーハンは日本のチューニング文化、いわゆるJDM文化に染まっていったという。 レースキャリアを終えた後は、自身のチューニングカーショップを開き、R34 GT-Rを自身の望む形にビルドすることが夢のひとつだと明かした。 2024年のF1日本GPを前にした4月2日(火)、シティサーキット東京ベイで行なわれたアルピーヌのイベントに登場したドゥーハンは、早口でR34 GT-Rへの愛を語った。 「(R34の)全てが大好きなんだ。僕は6~7歳の子どもの頃にFast and Furiousを観てから、JDMや日本全体への憧れと共に育ってきた」とドゥーハンは言う。 「R34 GT-Rは全ての面で本当に楽しいクルマだよ。本当に幸運にも、ドライブする機会があって、月曜日の夜はR34に乗ったし、ロサンゼルスやオーストラリアでもドライブしたんだ」 「僕はR34の硬いサスペンションや、VスペックとVスペックiiで採用されているカーボンの特性が大好きだ。パワーの面でもR34が持つポテンシャル……エンジンは本当に強力で、チューナーがどれだけパワーを引き出せるかという可能性もすごいんだ」 「今回ここ日本・東京に来ることができたから、残る夢はいつの日か自分のR34をビルドすることだね」 2025年はアルピーヌのレギュラードライバーとして日本を訪れるドゥーハン。日本GPの翌週はバーレーンGPが控えているが、早めに日本入りして日本の文化を楽しむことはできそうだ。