【社説】ホンダと日産 変革期を乗り切る統合に
ホンダと日産自動車が、持ち株会社方式による2026年8月の経営統合に向けて本格的な協議に入った。実現すれば、販売台数で世界3位の自動車グループが誕生する。 日産が筆頭株主の三菱自動車も参画を検討する。日本経済を支える自動車産業はトヨタ自動車などとの2陣営に集約される方向だ。競い合い、業界の地殻変動を乗り切る体制を築いてほしい。 電気自動車(EV)シフトをはじめ、自動車業界は「100年に1度の大変革期」といわれる。 米国のテスラや中国の比亜迪(BYD)といった新興勢力が台頭し、異業種から参入する動きも相次ぐ。 競争の舞台は、自動運転や新たな価値を生むソフトウエア開発に移った。巨額の開発費が必要で、日本勢は出遅れが指摘される。巻き返せなければ、業界の勢力図が一変する可能性がある。 共同記者会見で3社の社長が握手する場面はなかった。将来に対する強い危機意識の表れだろう。 ホンダと日産は来年6月に経営統合の最終契約締結を目指す。主導権は時価総額で上回るホンダが握る。 三部敏宏社長は「自立した2社として成り立たなければ経営統合の検討が成就することはない」と言い切った。日産の経営立て直しが経営統合の前提であるからだ。企業文化の違いも克服しなければならない。 日産の業績悪化は著しい。24年9月中間連結決算は、純利益が前年同期比93・5%減だった。ハイブリッド車(HV)の展開が遅れた北米市場で営業赤字に転落した。EVやプラグインハイブリッド車(PHV)が人気の中国市場でも販売の減少が続く。 中国市場ではホンダも苦戦している。 日産は3月に公表した中期経営計画を見直し、世界で従業員を9千人削減し、生産能力を20%縮小する方針を打ち出した。再建を着実に進められるかは内田誠社長の手腕にかかっている。 台湾の電子機器受託生産大手の鴻海(ホンハイ)精密工業が日産の株式取得に動いているとの情報も、経営統合への協議を加速させたとみられる。ホンダによる日産救済という側面は否定できない。 経営統合で車台の共通化、研究開発機能の強化、生産体制・拠点の最適化などの効果が見込まれる。購買機能統合によるサプライチェーン(供給網)全体の競争力強化も期待される。 ホンダと日産は車種のラインアップや事業地域が重なるため、重複を整理すればコスト削減が可能だ。新たな価値を創造するには異業種との協業が欠かせない。 ホンダは熊本県に、日産は福岡県に生産拠点がある。多くの取引先があり、地域経済への影響力は大きい。両ブランドを守る「攻めの戦略」を描いてもらいたい。
西日本新聞