涙を誘うヤクルトの窓際に追いやられた男のサヨナラ打
開幕戦の外野は、ミレッジ、雄平、ユウイチがスタメン出場。だが、3月31日の阪神戦で試合開始直前にミレッジが故障を訴えて戦線を離脱すると、立場を“受け入れた”田中にチャンスがめぐってきた。 「3番・ライト」で代役出場すると、翌日にさっそくマルチ。4月3日の横浜DeNA戦で3安打を放つと翌日に山口に頭にボールを当てられ病院に直行したが、2日休むと復活してきた。一度、窓際に追い込まれ、己の立場をわきまえた男は、挫折に強い。サヨナラの場面で田中の気力が、浅尾のそれを上回った。 「主力に怪我が出てチームとしては(僕が出場することは)不本意かもしれないが、真中監督には、仕事をもらっているので、それを生きがいに感じています」 かつてレギュラーを張ってきた男が、今の立場をそう表現してスタンドのファンの涙を誘った。 運命を恨むのではなく、今の立場を受け入れ、感謝の思いを忘れず、チームのために全力を尽くす。左遷されても、窓際に追い込まれても……悲しきサラリーマンの共感を呼ぶような田中の3年ぶりのサヨナラの一打。 田中は「ピッチャーが頑張っているので、なんとか打線が1点でも点をとって明日も勝ちたい」と言った。弱投の克服が今季のヤクルトのテーマだったが、2012年のドラフト1位の石山泰稚が8回を1点で踏ん張った。チーム思いの田中らしい明日への抱負だった。