「自分の好きなことは相手も好きだ」…親切の押し売りをしていませんか?今こそ知るべき“シンパシー”と“エンパシー”の違い
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第17回 『「多数決は少数派に対する暴力」…「しようがない」で受け入れないで! 大人も気付かない多数決の問題点』より続く
「シンパシー」と「エンパシー」
よりよく生きるための大切なテクニックの話を続けますね。 「シンパシー(sympathy)」は聞いたことがあるでしょう。同情とかおもいやりなんて訳されたりしています。『シンデレラ』という物語で「シンデレラは可哀そうだなあ」と思う気持ちが「シンパシー」です。 似たような言葉に「エンパシー(empathy)」というものがあります。 「エンパシー」は、「相手の立場に立つことのできる能力」のことです。 「シンデレラの継母は、どうしてあんなにシンデレラをいじめたんだろう」という理由を考えられるのが「エンパシー」です。 「エンパシー」は、「共感力」なんて訳されたりしてますが、シンデレラの継母に共感する必要はまったくないんです。 共感しないけれど、「どうして継母はいじめたんだろう?」と考えられる能力が「エンパシー」なんです。 「シンデレラの継母は、シンデレラの父親と結婚するまでは、娘二人を養うシングル・マザーだった。シンデレラの父親と結婚したら生活が楽になると思っていたのに、父親は全然助けにならなかったから、その怒りをシンデレラにぶつけたんだろうか」とか、 「シンデレラの美しさと、自分の娘二人の容姿の違いをよく分かっていたから、お城のパーティーに連れていかないとかのいじわるをしたんだろうか」とか、 「自分の娘達とうんと仲良くするために、共通の敵としてシンデレラをいじめたんだろうか」とか、継母の気持ちを考えられる能力が「エンパシー」です。