「自分の好きなことは相手も好きだ」…親切の押し売りをしていませんか?今こそ知るべき“シンパシー”と“エンパシー”の違い
今こそ必要な「エンパシー」
ぼくたちはずっと、「自分の嫌いなことを人にしてはいけません。自分の好きなことを人にしなさい」と言われてきました。 これは「シンパシー」の考え方です。思いやりとか優しさで相手と接しようということですね。 このアドバイスは「自分の好きなことは相手も好きだ」「自分の嫌いなことは相手も嫌いだ」という前提の話です。 でも、「多様性」の時代になってきたでしょう。ひとりひとり、好きなものが違っていますよね。 孫に対して、おじいちゃんおばあちゃんがいっぱいお菓子を買って渡しても、親が「うちはオーガニックのものしか与えませんから」と断った、なんて話聞いたことない? おじいちゃんおばあちゃんは「孫がかわいい」というシンパシーの気持ちに溢れている。それはとても素敵なことです。でも、それと、「自分が喜ぶことは相手も喜ぶ」ということは別なんです。 親が君のために洋服を買ってくれた。「絶対に素敵だから」と親は言う。でも、君から見たらそれは、とってもダサくて恥ずかしい。そんなことはなかった? 親は君を大切に思う「シンパシー」に溢れている。でも、君の立場に立つ「エンパシー」の能力はないんです。
鴻上 尚史