松本幸四郎の“宣戦布告”に尾上松也「勘弁してくれ」とタジタジ 歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」
「歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』」の製作発表記者会見が、本日9月28日に東京都内で行われた。 【画像】歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」ティザービジュアル(他11件) 中島かずきが作劇、いのうえひでのりが演出を担う「朧の森に棲む鬼」は、ウィリアム・シェイクスピア「リチャード三世」と、源頼光と家臣である四天王が大江山に住む鬼神・酒呑童子を退治する「酒呑童子伝説」の世界を融合させた物語で、2007年に松竹と劇団☆新感線のタッグにより、松本幸四郎(当時:七代目市川染五郎)主演で初演された。同作が、“歌舞伎の新たなるステージ”を目指して銘打たれた企画、歌舞伎NEXTの第2弾として、約17年ぶりに上演される。 会見には、幸四郎、松也、中島、いのうえ、そして松竹の山根成之取締役副社長が登壇。中島はまず「初演からもう17年経つんですね」と驚きの声を上げたあと、「『朧の森』を歌舞伎NEXTで、という話は以前からしていたのですが、コロナ禍もありこのタイミングになりました。歌舞伎NEXTの第1弾『阿弖流為〈アテルイ〉』(2015年上演)のときも手応えを感じていたのですが、今回はさらに新しい形で、新感線の手法と歌舞伎の手法を融合できるのではと、非常に楽しみにしております」と笑顔を見せる。初演との変更点については「一番大きな点は、キンタとシュテンですね。キンタは、初演では、演じていた阿部サダヲくんの個性にかなり寄っていたんですけど、今回は(尾上)右近くんということで、違うアプローチで立ち上げる予定です。またシュテンは、前回は女性の役として真木よう子さんが演じられていましたが、今回は性別を変えて、(市川)染五郎くんに立役として演じてもらいます。男の子になったことで、登場人物同士の関係性も変わってきますので、そのあたりを整理している最中です。とにかく、頭から最後まで、見どころのある芝居になると思いますので、ご期待ください」と構想を明かし、ファンの期待を煽った。 いのうえは「『朧の森』は、新感線ファンや、いのうえ歌舞伎ファンの中でも人気が高い作品でして。我ながらよくできていると、自画自賛している作品でもあります(笑)」と話し、「第1弾『阿弖流為』のとき、『歌舞伎ってどう作ればいいんだろう』と悩んでいた時期があったのですが、故・(中村)勘三郎さんの『歌舞伎俳優がやれば、歌舞伎になるよ』という言葉をきっかけに、『よし、じゃあやっちゃえ!』と思い切りがつき、歌舞伎でしか出ない空気感のある、新しい『阿弖流為』を完成させることができました。今回は、ラストの滝での立廻りといった、前回好評だった部分はしっかりと残しつつも、歌舞伎のいろいろな手法や演出をできるだけ取り込んで、さらに進化した歌舞伎NEXTにできればと思っています」と語った。 会見では、幸四郎も松也も赤と黒を基調とした衣裳に身を包んでいた。幸四郎はさらに、髪を赤く染め、カラーコンタクトで瞳の色を変え、また手の甲に“朧”と書かれたタトゥシールを貼る、という出で立ちで登場。幸四郎は「歌舞伎NEXTの第2弾で『朧の森』をやらせていただけること、本当に興奮しております」と言葉に思いをにじませ、「「前回の『阿弖流為』、そして今回の『朧の森』と、歌舞伎NEXTでは、中島さんといのうえさん、お二人の世界観と歌舞伎を混ぜ合わせると何ができるかということをテーマにしています。“この世にないものを誕生させる”ということを目指し作っていきたいと思っていますし、歌舞伎“NEXT”とネーミングしたからには、レパートリーとなりうる作品を作り続けていきたい」と真摯に述べた。 2007年の初演について、幸四郎は「一番思い出すのは、新橋演舞場での公演が1月だったことです。当時、新感線の公演に出させていただくときは、7月に稽古をして8月に本番、というスケジュールが多くありました。公演時期が、じっとしているだけでも暑い夏じゃないことに、ほっとしていました」と、新感線作品のアクションシーンの激しさを言外に匂わせつつ、「ただ冬だったので、本水を使った滝での立廻りは寒くて、相変わらず大変でした(笑)。また個人的なことですと、2月の大阪公演の最中にうちの娘が生まれまして、そのことも思い出深いです」と微笑む。松也とのWキャストに話が及ぶと「これは勝負です。……勝たせてね?(笑)」と松也におねだり。会場を笑いで包んだあと、改めて「キャストはすごい方々ばかり。力を合わせて、お客様を『朧の森』の世界に引きずり込みたい」と話した。 松也は「歌舞伎NEXTが発足するタイミングの2014年、ちょうど四国のこんぴら歌舞伎で幸四郎さんとご一緒しておりまして、『一緒にやりたいね』とお話してくださいました。ただ、僕が(『阿弖流為』と)同時期に別の公演が決まっていたためご一緒できず、とても悔しかったことを覚えています。なので、今回のお話をいただいたときは、非常にうれしゅうございました(笑)」と満面の笑みを浮かべる。さらに「僕は、幸四郎さんが新感線作品に挑戦されている姿を観て、新感線作品に憧れを持ちましたし、幸四郎さんがこれまで携わってこられた作品の中でも、『朧の森に棲む鬼』はすごく印象的な作品で、ライという役は、僕だけではなく若手俳優みんなが憧れていた役どころ。そんなライを、幸四郎さんとWキャストでやることへのプレッシャーはかなり大きく、さきほど『勝負です』と言われたときは、正直に申し上げますと、『勘弁してくれ』という気持ちでした(笑)」と心中を吐露。「今回は、初演とは異なる歌舞伎バージョン。初演をご覧になられた方にも新鮮に観ていただけるようにしたいですし、幸四郎さんがおっしゃった“この世にないものを誕生させる”ことを目指し、キャストの皆さんと、いのうえさんに導いていただきながら、全力で勤めさせていただければ」と言葉に力を込めた。 話題は、当日の幸四郎と松也のファッションに。幸四郎は「僕は新感線さんの会見には、誰に注文されているわけでもないのに、自分では絶対に買わない衣裳を身に着けて、自分なりにカッコいい格好で出席するようにしています。今つけている手錠モチーフのネックレスは、娘から借りたのですが、(手錠モチーフのものを)持っているのはどうしてなのか……それは家に帰ってから聞こうと思っています(笑)」と明かす。松也は、そんな幸四郎に対し「幸四郎さんから、事前に『こういう格好をする』と聞いていませんでしたので、僕は比較的控えめな衣裳しか用意していませんでした。ネックレスも急ごしらえの中途半端な形になってしまって……先に言ってほしかったなと(笑)」と冗談交じりに苦情を言うと、幸四郎は微笑みで返した。また会見終了後のフォトセッションでは、カメラマンからの「悪い顔でお願いします!」との掛け声に、幸四郎が苦しそうな表情を浮かべ、報道陣を戸惑わせる一幕も。幸四郎の様子に気づいた松也はすかさず「“悪い顔”って、体調悪い顔じゃないですよ!」とツッコミを入れ、その息のあったやりとりで、会場を笑いで包んだ。 公演は11月30日から12月26日まで東京・新橋演舞場、来年2月4日から25日まで福岡・博多座で行われる。東京公演のチケット販売は10月25日10:00、福岡公演のチケット販売は12月14日10:00にスタート。 ■ 歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」 2024年11月30日(土)~2024年12月26日(木) 東京都 新橋演舞場 2025年2月4日(火)~2025年2月25日(火) 福岡県 博多座 □ スタッフ 作:中島かずき 演出:いのうえひでのり □ 出演 ライ / サダミツ(交互出演):松本幸四郎 / 尾上松也 ツナ:中村時蔵 シキブ:坂東新悟 キンタ:尾上右近 シュテン:市川染五郎 アラドウジ:澤村宗之助 ショウゲン:大谷廣太郎 マダレ:市川猿弥 ウラベ:片岡亀蔵 イチノオオキミ:坂東彌十郎