都内「タワマン乱立」で“下町消滅”は問題ないのか 「商店街をなくす再開発」ばかり進み、「下町情緒」は消え本当にこれでいいの?
■歴史ある街並みも「駅前再開発」で様相が変わる 三多摩地区でも住宅建設バブルが発生しているが、代表的なのが府中市(駅前エリア)だ。 府中は江戸時代まで国府の置かれた由緒ある都市で、駅前から大國魂神社までは鎌倉時代に由来するけやき通りが南北に貫き、比較的低層なビルで緑の美しい景観を作り出してきた。 しかし、平成初期の京王線の高架化と新駅舎完成により、駅周辺は「府中スカイナード」という空中歩行通路(ペデストリアンデッキ)が完成した。実際にはデッキ下は薄暗く、決して多くない人通りをさらに分散させた。
2019年には「駅前再開発の目玉」として出店した伊勢丹が撤退するなど、落ち目感は拭えない。 そんな府中で、筆者から見ると「レッドカード」を出したいような開発が進んでいる。 ■府中のタワマン開発に「レッドカード」!? 由緒あるけやき通りから府中街道に至る、渋い飲食路地だった宮西国際通りが、タワマン街に変身中なのだ。 この付近には将来的にタワマンなど中高層のマンションが30~40棟(建設・計画・構想中含む)も現れ、「供給過多」の懸念が出ている。
近隣市の駅前開発事業が進む中、府中市は集客力の減少が懸念されるとして、さまざまな手を打ったという。 飲食街の空き店舗対策や土地の売買などを進めた結果、マンション開発が急ピッチで進んだ。 筆者は、「古い店舗や建物が消える」と聞いて毎年のように様子を見に通っているが、コロナ後はマイナス金利効果が効きすぎて開発が止まらなくなっているようだ。 「都市の魅力を集積させ、都市間競争を勝ち抜く」という一見美しいシナリオには、「タワマン系住民を増やし、市の財政を豊かにしたい」という本音がいつも隠れている。
乗降客や駅前来訪者(駐車台数)、大規模店舗の売上高などが総崩れの中、人口増のため、市はマンション誘致で税収増を図ったが、そのハードルをクリアするためには、「昔ながらの面影を残す商店街」を高級化させるしかなかった。 「駅近・新宿まで25分」を売り物にしているが、そのマンションの間隔は狭く、雨後のタケノコのような状況になりそうだ。 今後、府中が「レッドカード」をもらうか「MVP」となるかは、新住民、不動産業者、旧住民の中で見方(味方も)が分かれそうだ。