持っている男・オコエが大暴れ?! 暴走・三塁打、好守備、そして忘れ物
実は、前日、東京ドームで行われた巨人戦の試合前に内角打ちの名人、巨人の坂本勇人(27)から内角打ちの極意を伝授されていた。テレビの取材が入っていたため、通常より早く球場入りしていたオコエは、使用バットのメーカーが坂本と同じで、しかもバットの型の原型まで坂本タイプのため、その運動メーカーの担当者を通じて話をする機会を作ってもらったのだ。オコエは「内角は、どういう意識で打てばいいんですか」と質問、体の回転方法や、左肘の抜き方など、坂本の極意を教えてもらったのである。 右打者の内角対策は、ほとんどの打者の永遠のテーマ。一度のワンポイントレッスンで打てるほど甘くないが、それを消化して再現したところがオコエの非凡なセンス。 7回にも一死一塁から久保のカーブをしっかりとためてレフト前ヒット。一、三塁と、チャンスを広げてマウンドからベテラン投手を引きずりおろした。古巣との対決に燃えていた藤田一也(33)のタイムリー三塁打で、この日2度目のホームイン(藤田は4安打3打点)。
そして打と走だけではなく守備でも魅せる。 7回一死一塁で代打・関根の右中間を襲う打球を背走、ジャンプ一番、左手を思い切り伸ばしてキャッチした。「グランドのことが一番気になった。ハマスタはほとんど経験がないのでフェンスまでの距離とかを把握しておかねばならなかった」。しかも、LEDライトを使用している横浜スタジアムのナイター照明は慣れないと「眩しい」と外野手に不評だ。そういうアウェーの難しさにも、オコエは違和感なく対応した。 楽天は、この試合にターゲットを絞ってゲームプランを立てていた。勝てば交流戦9勝目となり交流戦での勝率5割をキープできる。梨田監督は、藤田のタイムリーで2点を奪い、さらに一死三塁からピッチャーの代わり端の初球に茂木にスクイズのサイン。「相手がガッカリしている状況だし、1点でも多くとりたかった」。梨田監督の執念采配が成功した。岡島のタイムリーまで飛び出て5点差をつけたが、8回にミコライオ、9回に松井裕をスタンバイ。最後に守護神がストライクが入らずに、3点差にまで詰め寄られたのは誤算だったが、チームの必勝パターンを確認するかのような戦いで交流戦の9勝目を取った。 報道陣に応対しながら移動バスへと歩いていたオコエが、もう数メートルで、到着というときに、突然、声を張り上げた。 「やべえ、(ロッカーに)カバンを忘れた!」 最後の最後まで……。やはり、このルーキーは只者ではない。